2016 Fiscal Year Research-status Report
体育で育成する思考力・判断力・表現力ー21世紀型能力と学習指導要領の視点から
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15K12628
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
三木 ひろみ 筑波大学, 体育系, 准教授 (60292538)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 思考力 / 判断力 / 表現力 / 21世紀型能力 / コンピテンス |
Outline of Annual Research Achievements |
体育で育成する思考力・判断力・表現力について、21世紀型能力と学習指導要領の視点から分析するために、平成28年度は、小中高等学校の教員を対象に体育授業における児童・生徒の認知的コンピテンス(思考力・判断力・表現力)についてインタビュー調査、小学校4年生から6年生までの児童704名を対象とした認知的コンピテンスの質問紙調査、小学校4年生15名を対象とした、ゴール型(サッカー)指導において自ら考え意志決定する思考力・判断力を育成するためのミニゲームと指導方法の効果の検証を行った。 教師に対するインタビュー調査の結果、教師は21世紀型能力に示されている認知的コンピテンスの重要性について認識しており、体育の授業中の児童の様子から認知的コンピテンスを把握し評価していることが分かったが、認知的コンピテンスが技能の習得や発揮と結びついていないことを指摘していた。教師に対するインタビュー調査と21世紀型能力の定義、桜井(1983)の認知されたコンピテンス測定尺度の認知的コンピテンス尺度を基にして質問紙調査票を作成し、小学校4年生から6年生までの児童に質問紙調査を実施した結果からは、教員が指摘していたように児童の認知的コンピテンスと運動有能感に相関が見られなかった。また、高学年では男子の方が「自己主張」の項目の得点が女子よりも有意に高かった他は性差は見られなかった。 小学校4年生を対象に、ゴール型指導において自ら考え意志決定する思考力・判断力を育成するためのミニゲームと指導方法を実践し、質問紙調査と児童・教師の対話のプロトコル分析によって効果を検証した結果、プレーの成否に関わらずプレー選択の根拠を述べることができれば賞賛するという指導方法や、仲間との意見交換を通じて適切な選択肢が複数あることを理解する機会を持つことは、自ら考え意思決定する力や根拠を説明する表現力を促すことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画通り、小中高の教員を対象としたインタビュー調査を実施し、「思考力・判断力・表現力」についての小中高の教員の認識と学習成果の評価について情報収集することができた。このインタビュー調査で明らかになった教員から見た「思考力・判断力・表現力」と、H27年度に21世紀型能力と学習指導要領を分析して把握した「思考力・判断力・表現力」の概念、そして既存のコンピテンス尺度である「認知されたコンピテンス尺度」に含まれる認知的コンピテンス尺度を基に、児童自身に体育授業における「思考力・判断力・表現力」を評価させる質問紙調査票を作成することができ、十分な数の調査対象者に対して調査を実施することができた。 研究計画では、コンピテンス評価法として海外の評価方法を採用する予定であったが、次期学習指導要領の公表に向けて、アクティブラーニングや対話的・深い学びが強調されたことから、「思考力・判断力・表現力」を育成するための指導法の効果検証に際しては、教師と生徒、生徒間の対話のプロトコルの分析を中心に評価を行なった。平成29年度に向けて、授業中の児童の行動についても予備的検討を始めており、おおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次期学習指導要領等の改訂案が公表され、「主体的・対話的で深い学び」やアクティブラーニングの視点から授業改善をさらに充実させ、子どもたちがこれからの時代に求められる資質・能力(21世紀型能力・生きる力)を身につけ、生涯にわたって能動的に学び続けることを目指すことが明示された。従って、21世紀型能力と学習指導要領の視点から体育で育成する思考力・判断力・表現力について検討する本研究においても、次期学習指導要領のこの方向性に従って研究を進めていく。そのため、対話のプロトコル分析を中心に学習成果を分析し、対話や学びの深まりを評価するための指針や分析方法について検討する必要がある。また、授業改善の方法についても、アクティブ・ラーニングを推進していく方向で検討する。 また、保健体育教員養成課程の大学生が、次期学習指導要領のねらいや21世紀型能力、「主体的・対話的で深い学び」やアクティブラーニングについて理解し、思考力・判断力・表現力を育成する授業案を考えられるようにするための教育プログラムを開発していく。
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