2015 Fiscal Year Research-status Report
反省的実践家を育成する新しい教員研修~授業中の省察を可能にする方法論の提案~
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15K12630
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
七澤 朱音 千葉大学, 教育学部, 准教授 (10513004)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 意思決定 / 省察 / 現職教員研修 / 介入 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、授業終了後に授業を振り返る旧来の教員研修の方策を再検討し、授業中に第三者の助言を取り入れながらリアルタイムに授業改善を行っていく(省察能力を高める)方法を3カ年に亘り検証することである。 平成27年度は、第一段階として、教師の授業中の意思決定(decision making)を捉え、第三者の介入によりそれらを引き出す方法を採用した。対象は、所属長から許可の得られた熟練教師Aと中堅教師Bとした。これは、本研究がリアルタイムに介入を行う方法論を採っているため、教授能力が低く授業実施上の問題がある教師だと、通常の授業に支障が生じると判断したためである。領域・学年・日程は、A「体つくり運動(第1学年・7月と12月)」と、B「表現運動(第2学年・9月)」であった。 教師Aの7月(第1回)は第三者の介入なし、12月(第2回)は介入ありとした。7月は、授業中の意思決定(理由)が授業者から語られなかった。よって、12月を迎える前に“巡視行動や助言を行ったのはなぜか”等、具体的な意思決定の例を研究者が提示した。結果、第2回では“技能下位児童が学習のねらいに沿った取り組みができているか”に対する発話が多く生まれた。ここでは、授業者の“行動の理由”を問うリアルタイム介入が第三者によって行われたが、そこでも“技能下位児童に対する助言や支援についての発話”が多くなされた。 教諭Bは、単元の前半で介入なし、後半で介入ありとした。教師Bの意思決定の多くは、クラス全体の勢いを察知し、説明を加えたりよりダイナミックな示範を行ったりするものであった。第三者は、クラス全体の実態を授業者に返すとともに、示範や声かけについて修正する介入を行った。 インタビュー調査で両教諭とも、授業の客観的実態や修正方法が耳から入ってくることで、自らの指導観を見直したり授業を即座に修正することができたとしていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画段階で想定していた(研究を約束していた)授業者が、平成27年度の定期人事異動により異動となった。そのため、対象校を富里市立D小学校に変更することとなった。他にも対象にしていた授業者の人事異動により、対象校をH市の小学校へと変更することとなった。しかし、学校こそ計画と異なるが、対象は予定していた熟練教師と中堅教師であったため、ほぼ予定通りに検証授業が実施できた。 リアルタイム介入には、アメリカンフットボールの無線を使った「ベースステーションとヘッドセット」、音声を録音する機材を用意した。本研究の方法論に合わせて、専門の業者に独自のセッティングを依頼し初期設定を行った。ただ、「表現運動」を実施した授業者の示範が、業者の想定していた運動の強度を超えていたため、機器同士をつなぐコードやアダプターなどに不具合が生じ、度々設定をし直して臨んだ。調整後は発話が録音され、データ収集が順調に実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の実践で、熟練教師と中堅教師に対して、授業中の意思決定を引き出す方法論と成果は概ね得られた。しかし、インタビュー調査から、直前ではなく過去の行動について介入が行われると、授業の遂行に支障が出る可能性も明らかになった。よって、平成28年度は第三者が介入するタイミングについても検討していく。また、2~5年目等の若手教師・6年目~の中堅教師の力量形成と、もう一人の第三者(指導にあたれる熟練者:スーパーバイザーB)が介入を行っていくことが本研究の最終目的である。よって、平成28年度以降、対象人数を増やすとともに、対象を若手教師にまで広げ、スーパーバイザーBの確保も行っていく。 さらに、教師の省察能力を引き上げるためには、その意思決定が妥当だったかどうかの自己評価まで行う必要がある。よって、平成28度以降、意思決定の先の省察まで引き出す実践を行っていく。
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Causes of Carryover |
平成27度は、当初予定していた授業者の定期人事異動により、学校の変更を余儀なくされた。2名の授業者(熟練教師・中堅教師)と第三者による実践はできたため、予定を大幅に修正する必要性はないが、複数名対象としたかった中堅教師の人数が1名でとどまった。そのため、機材の購入が最低限となった。また、方法論の妥当性を探ることを最優先し、授業実施上の環境整備にとどまった。 学会が首都圏で開催されたのも理由となる。平成27年度は、移動手段の確保や宿泊を伴わない首都圏で学会が開催されたため、予定していた旅費も大幅に繰り越しとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度以降、映像を用いた教師行動分析も合わせて実施し、複数の学校に所属する授業者(若手・中堅)・第三者・オブザーバーBの介入が必要となってくる。そのため、ビデオや無線環境の機材などの追加購入が必要である。 また、得られたデータを分析するために、統計分析ツールやパソコン環境も購入、整備する必要もある。平成28年度はすでに、習志野市立Y小学校とH小学校との研究協定を結んだ。Y小学校には単元を通して介入し、教師の省察能力向上を探って行く予定である。
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Research Products
(2 results)