2017 Fiscal Year Research-status Report
反省的実践家を育成する新しい教員研修~授業中の省察を可能にする方法論の提案~
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15K12630
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
七澤 朱音 千葉大学, 教育学部, 准教授 (10513004)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 同僚性 / 即時的修正 / 反省的授業実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、二つの検証授業を実施した。 <授業1>1月18日~C市立H小学校5年1クラスで全5単位時間「バスケットボール」、授業者は初任(担任)でスーパーバイザー(以下SV)は熟練で力量のある教務主任 <授業2>7月14日N市立Y小学校2年・4年各1クラスで全2単位時間「表現運動」、2年の授業者は教職5年(表現運動は初の担任)でSVは熟練の研究主任(教職20年)、また4年の授業者は教職8年(体育主任で表現運動の研究歴有りの担任)でSVは同学年の同僚教師(教職8年) 授業者・SV・観察者(体育科教育学専門)の三者が、授業中に無線を通じて行ったやりとりを文字化した。得られた音声データは意味のある一文を1個として量的に分析し、SVの助言に対し①授業者が即時的に修正できた事柄、②できなかった事柄、③教授方法・教材内容・児童のカテゴリー分け、の3点を併せて分析した(学習内容に直接関わる発話のみに限定)。 分析の結果、<授業1>指導者が徐々に即時的修正をできるようになり、SVの児童の実態(ゲーム中のゲーム運び等)に関わる助言が増加していくことが明らかになった。また、①(修正可)はタイマー・得点板等のマネジメントに関するものや各下位教材の意図を児童に伝えること等だった。しかし、②(修正不可)はゲーム中に必要な技能の理解と示範(「SV:どういう位置にディフェンスがいれば的確に守れているのか」という助言に対し修正できなかったこと等)が挙げられた。<授業2>SVを務めた研究主任の発話数は教授方法(25)・教材内容(24)・児童(58)であったが、同学年の教師は、教授方法(1)・教材内容(0)・児童(28)であった。表現運動を熟知している研究主任は、教材内容と教授方法、児童の実態を合わせて状況判断し助言できていたが、同僚教師は児童以外の教材内容や方法に関する見取りが生まれにくいことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(研究の中断申請書に記載済み)これまでの二年半は、予定通り学校現場における検証授業を実施し、日本体育学会と日本スポーツ教育学会の年間二回の口頭発表他、順調に研究を遂行してきた。 しかし、平成29年度7月以降における妊娠初期の体調不良(切迫流産・悪阻)や頻回の検診・通院などにより遅れが生じていった。また、研究初年度からの二年半様々な学校現場と経験年数の教師を対象に授業実践を行い方法論を模索してきたが、授業者とスーパーバイザーの対象を絞る点において研究方法論の修正が必要となった。具体的には、以下のとおりである。 (1)授業者は初任教師以外にすること(理由:指導者に初任教師、スーパーバイザーに熟練教師、という組み合わせで実施した授業実践の結果、両者の経験知に差がありすぎて結果的に初任教師が熟練教師の質の高い見取りからの助言を認識し、授業中に即時的修正ができないことがあったため) (2)授業者とスーパーバイザーの教授歴は異なる設定にすること(理由:指導者に若手教師、スーパーバイザーに研究主任、という組み合わせで実施した授業実践の結果、スーパーバイザーが学習内容・教授方法に関わる幅広い知識を元に児童の実態を分析し助言できていた一方、両者ともに教授歴8年目という組み合わせで実施した際に、スーパーバイザーの助言が児童に関するものに偏ってしまったため) 他にも、同学年の担任が同僚の授業における即時的修正に関わるためには、その教師が担任をしているクラスのそのコマをまた別の教員が充足しなければならないこと等の問題も生じた。このような対応は学校現場では現実的に困難であり、申請者が最も重視している「研究方法論の学校現場への応用」ができかねると推察した。そのため、授業者の教授歴やスーパーバイザーの選考方法も要検討であり、そのために先行論文のさらなる読み込みや方法論の再検討をしていこうと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
育休明けの平成31年度は、これまでの実践のデータ(発話分析と効果)をより細かく分析していくとともに、先述した方法論の困難さを解消し、最終検証授業を実施する。 具体的には、授業者は中堅教師(教授歴約5年~10年)と設定し、そこにスーパーバイザーとして主観教師・研究主任・教務主任・副校長などが授業に入り即時的修正を行い、そのコマを他の教師が代わって指導しなければいけない状況を回避する。また、実施できていない小学校高学年の授業へと分析対象を広げるとともに、器械運動など表現運動以外の運動領域でも実践して、本研究の応用可能性を検証していく。 育休から復帰後の平成31年度も、引き続き日本体育学会、スポーツ教育学会など、申請者がこれまで必ず口頭発表を行ってきた学会で成果を発表し、学術論文としてまとめていく。
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Causes of Carryover |
平成29年度7月以降における妊娠初期の体調不良(切迫流産・悪阻)や頻回の検診・通院などにより、研究を修正しまとめる段階において遅れが生じていったため。また、平成30年3月12日より産休に入り研究を中断せざるを得なかったためである。 産休・育休から復帰後の平成31年度は、研究対象者の教授歴・スーパーバイザーの立場(主幹教諭・副校長・教務主任など)を再検討し、教育現場の負担を極力少なくするように方法論を修正していく。そして、これまで発表してきた学会(日本体育学会・スポーツ教育学会)において研究成果を発表し、学術論文としてまとめていく。
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Research Products
(2 results)