2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K12644
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
門田 浩二 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50557220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山際 伸一 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 准教授 (10574725)
松尾 知之 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00209503)
木下 博 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (60161535)
那須 大毅 立命館大学, 公私立大学の部局等, 講師 (20758411) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 投球 / 感覚運動制御 / スポーツバイオメカニクス / 力覚センサー |
Outline of Annual Research Achievements |
投擲物の最終的な動きを決定するのは,指先からボールに加えられる力の作用であり,この指先とボール間に働く力を正確に知ることが出来なければ,速く正確に投げるための制御原理を理解することはできないと考えられる.我々は,ボールに軽量小型の3軸力覚センサーを埋め込むことによって,ボールに加わる力を直接計測することに成功した.投球中(踏み出し脚の着地からリリースまで)に,指からボールに加わる力(合力)は二峰性の波形を示し,ボールリリースの約50ms前に第一のピークを迎えた.モーションキャプチャーによる動作分析の結果から,この第1ピークは,肩関節が最大外旋位に達する時期であり,肘関節の伸展,手関節の掌屈が開始された直後にあたった.この第1ピーク付近は方向変換を伴う急激な加速の生じる区間であり、そのような方向変換や加速に耐えてボールを保持するための力発揮であると考えられる。一方、第2ピークはリリース直前(8ms前)に生じており、ボールを最終的に加速するための力発揮と考えられる。 さらに,ボールの表面を滑りにくいもの(硬式野球ボールの縫い目有)と滑りやすいもの(硬式野球ボールの縫い目なし)の場合を比較すると,投球速度および合力として見られる二峰性のピークのいずれにも有意差は見られなかったものの、リリース直前(5ms前)に生じる剪断力(接線方向の力)のピークに有意差が認められた。縫い目の有るボールでは約40N±10N、縫い目なしのボールでは約30N±7N、と縫い目の有るボールには1.3倍以上の強い力が加えられていることが確認された。 野球では、ボールの縫い目に指をかけて強い剪断力をボールに与えることで、ボールに回転力を与えていると考えられ、縫い目がない場合には十分な剪断力を発揮できずに、回転力を失い、ボール速度、到達距離、制球力などに影響を及ぼすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、超小型・超軽量の力覚センサーをボールに埋め込み、無線通信により外部でデータ取得が可能となるような、センサーモジュールを開発することを目指した。当初の予定通り、無線通信にはBluetoothを用い、予備実験を行った。しかし、高速回転・高速移動の環境下ではBluetoothの通信安定性が悪くなってしまうことがわかり、安定してデータを取得できるように、設計変更を行った。現在、モジュール内に超小型・超軽量のデータロガーを取り付け、試行後に有線(USB)でデータを取得するモジュールの開発を終え、ボールへの埋め込み作業を実施している。 上記のように、モジュールの設計変更のために若干の遅れがあるものの、実験系の構築に関しては、これまでに開発してきたBluetooth方式や半有線(リリース後にコードの接続が外れる)方式で予備実験を進めていることから、平成28年度にはモジュール開発の遅れの分は取り戻せると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
モジュールの埋め込み作業が終了し次第、予備実験を開始する。今回の予備実験では、特に、ボールの重さの変更に焦点をあてて実施する。予備実験の結果から、重さを2つの条件に絞る。予備実験が順調に進むことが確認でき次第、モジュールおよび力覚センサーを複数作製し、本実験の準備を進める。 本実験では、重さ要因2条件の他に、摩擦要因2条件(異なる表面素材)、球速要因2条件の計6条件について、一般実験参加者10名と熟練者10名の投球動作をモーションキャプチャーシステムを用いて計測する。 力覚センサーから得られた力発揮パターンの特徴量および動作分析結果から、パフォーマンス評価が可能となる指標を同定する。 本年度の後半は、研究の総括を行うとともに、成果の外部発表と論文化に力を注ぐ。
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Causes of Carryover |
当初予定していたBluetoothを用いた無線通信でのデータ取得が不安定であり、そのまま複数のモジュールを作製することは避けることとなり、センサーやモジュールの購入を控えたことで使用額が予定よりも少額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、モジュール内に超小型・超軽量のデータロガーを取り付け、試行後に有線(USB)でデータを取得するモジュールの開発を終え、ボールへの埋め込み作業を実施している。予備実験により、この新モジュールの作動確認が完了し次第、昨年度支出予定分で複数モジュールを作製することになるため、若干の時期の遅れが生じただけで、使用内容の大きな変動はない。
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Research Products
(2 results)