2015 Fiscal Year Research-status Report
| Project/Area Number |
15K12655
|
|---|
| Research Institution | Waseda University |
|---|
Principal Investigator |
寒川 恒夫 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (70179373)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
| Keywords | 動物スポーツ / 動物愛護 / 競馬 / 鴨猟 / ラムサール条約 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度にあたる本年度は動物スポーツの分布確認とフィールドワーク実施に当てられており、フィールドワークは日本とロシアについておこなわれた。ロシア・フィールドワークはブリヤート共和国においておこなわれた。ブリヤート族はモンゴル系の民族で、そのため、モンゴル人民共和国や中華人民共和国に住む同族と同じナーダム祭を毎年夏に催す。今日なお遊牧民族文化を色濃く保持する彼らの年間最大のこの祭には、動物スポーツが多い。わけても20～30ｋｍを競う競馬は人気種目だが、その過酷さ故に、途中で落命する馬も多い。こうしたレースの背景には彼ら独自の動物観が存在する。来年度予定の中央アジア遊牧民のブズカシ（競技開始に先立って頭と四肢を切断した羊の胴体をボールにし、ゴールへもたらすのを競う馬上ラグビー）とともに、遊牧民の特異な動物スポーツ文化として、重要である。日本については、沖縄、石川、北海道においてフィールドワークをおこなった。沖縄では闘牛、石川では鴨猟、北海道ではばんえい競馬を調査対象の中心とした。石川県の鴨猟（地元では坂網猟と呼称する）は加賀市の片野鴨池で実施されている江戸時代から続く伝統行事で、石川県無形文化財に指定されている。1998年には「加賀市片野鴨池坂網猟保存会」が結成され、その背景文化として鴨池の生態環境保護に資するラムサール条約が導入されている。この条約は人間と自然の共存を尊重するwise use（賢明な利用）を原理とするもので、本研究課題である”動物スポーツと動物愛護の共存”にとって、モデルとなる精神といえよう。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定の”動物スポーツの分布確認”は、予定通り、諸外国の研究協力者から動物スポーツの情報提供を受けて進展している。とりわけ興味深いのは、ヨーロッパ担当協力者から教示されたスペインの牛追い祭りの変化である。従来、追い立てられる牛は、ゴールの闘牛場に着くと、殺されることが多かったが、近年、動物愛護団体の抗議を受け、牛の代わりに直径3ｍの巨大なボールを使用し、これが評判を呼び、他に広がりそうな状況にあるという。ボールに変えれば動物愛護団体が行事の経済的支援を行うというバーター提案が奏功したともいう。”動物スポーツと動物愛護の共存”方策を探る本研究にとって、貴重な情報であったが、こうした予測不可能な事例収集への対応が不十分であったと反省される。フィールドワークは当初予定の韓国調査が果たせなかった。インフォーマントとの日程調整不調が原因であった。しかし、韓国には、闘牛、闘犬、鷹狩など多くの動物スポーツがおこなわれ、その法律上の格差が問題という情報を得た。闘牛のみが合法なのである。格差出現の経緯について、次年度フィールドワークであきらかにする必要がある。本年度の研究進捗状況は、全体として、ほぼ順調と評価される。
|
| Strategy for Future Research Activity |
平成28年度・平成29年度計画は、ほぼ予定どうりにおこなわれる。フィールドワークは、平成27年度予定の韓国が平成28年度に実施される。なお、上述スペイン牛追い祭りの変容のように、動物スポーツ実施団体と動物愛護団体との協調事例は、当初予想されなかったものであり、今後の研究推進において、重要事項として追加する必要があると判断される。
|
| Causes of Carryover |
本年度計画で予定されていた韓国動物スポーツのフィールドワークがインフォーマントとの日程調整不調により中止されたことが、次年度使用額発生の原因であった。
|
| Expenditure Plan for Carryover Budget |
発生した次年度使用額は、本年度計画の当初予定どうり、韓国動物スポーツのフィールドワーク実施に使用される。
|
Research Products
(1 results)
