2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K12656
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
彼末 一之 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (50127213)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
正木 宏明 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (80277798)
加藤 孝基 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 助手 (10750771)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 弓道 / 運動準備電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
日常生活やスポーツ動作において、筋のリラックス(弛緩)は重要である。先行研究より、筋弛緩は脳の能動的なプロセスによるものであることが知られている。本研究では筋の弛緩が重要な役割を果たす弓道の“離れ”を実験モデルとして実際のスポーツ現場における筋弛緩の脳制御機構を明らかにする。また、筋弛緩をより効率良く体得するための方策を探る。そのために弓道の“離れ”時の筋活動と脳波を解析する。随意運動が行われる直前には、運動準備電位という頭皮上の陰性電位変化が生じることが知られている。この運動準備電位は、収縮時のみならず、筋弛緩を行う際にも生じることが明らかにされている(Rothwell et al., 1998)。そこで本年度は、弓道動作時の運動準備電位を測定した。被験者は弓道の熟練者(経験10年以上の有段者)10名ずつである。上腕、前腕および手の筋群(第一背側骨間筋、総指伸筋、長母子外転筋、浅指屈筋)から筋電図を取得した。脳波の電極装着部は国際式10-20電極配置法に基づき、64箇所から取得する。運動準備電位は、弓に装着する加速度センサーからの信号をもとに、弓が離れる瞬間をトリガーとして加算平均により求めた。加算回数は40回(40試行)とする。その結果、すべての被験者から運動準備電位を観察した。しかし、その振幅、時間には個人差が見られた。また“離れ”後の脳波上の応答には個人間で大きな違いが見られた。これは“離れ”が単に収縮の終了ではなく、個人によってはその後の動作(残身)につながる部分であるためと推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、弓道の熟練者から脳波、筋電図の基礎的なデータを得ることができた。その結果は仮説に反して”離れ”前に運動準備電位が生ずるというもので、あった。これは従来弓道で言われている「無意識な」動作であるとの通説には反するもので興味深い。
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Strategy for Future Research Activity |
15年度には予想に反して熟練者でも運動準備電位を観察した。そこで、16年度には弓道とよく似た競技であるアーチェリーの選手から同様な運動準備電位が観察されるかを中心に研究をすすめる。
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Causes of Carryover |
本年度は主として測定系を確立するための予備実験を行った。計画は順調に進み、弓道の離れ時の脳波測定は可能であることを確認した。そこで、来年度は多くの被験者において本実験を進行する予定であり、そのために謝金をできる限り確保するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
被験者一人約5,000円で23名分の謝金を確保する。
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