2015 Fiscal Year Research-status Report
持久性運動開始前の糖質摂取は本当にインスリン・ショックを引き起こすか
Project/Area Number |
15K12673
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
樋口 満 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (20192289)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 糖質摂取 / 持久性運動 / インスリン・ショック / 血糖値 |
Outline of Annual Research Achievements |
持久性運動の開始30~60分前の糖質摂取は、運動開始直後に急激な血糖値の低下を引き起こし、運動パフォーマンスを損なう、所謂「インスリン・ショック」の原因となると言われている。しかし、これらの現象を報告した研究は、実験室内で長時間の絶食後に行われており、実際のスポーツ現場には当てはめることができない。そこで本研究は、実際のスポーツ現場に即した状況を設定し、運動開始30分前の糖質摂取が、運動開始後の血糖値および持久性パフォーマンスに及ぼす影響を検討することを目的として行った。 平成27年度は、日本人若年男性9名を対象として、朝食摂取の有無が、インスリン・ショックの発生に及ぼす影響を検討した。被験者は朝食を摂取もしくは絶食の条件において、運動開始30分前に150gのグルコースを含む糖質飲料もしくはプラセボ飲料を摂取した後、最大酸素摂取量の75%の強度で60分の自転車運動を行った。60分の運動終了後、最大酸素摂取量の90%の強度で運動を行い、疲労困憊に至るまでの時間を計測することにより持久性パフォーマンスを評価した。 糖質摂取条件において、運動開始直前における血糖値は、糖質摂取前と比較して有意に上昇したが、朝食摂取の有無に関わらず、運動開始15分後および30分後における血糖値は、糖質摂取条件とプラセボ摂取条件との間に認められなかった。また、持久性パフォーマンスにも条件間で差は認められなかった。 以上の結果より、朝食摂取の有無に関わらず、日本人男性において運動開始30分前の糖質摂取は、運動中の血糖値低下を引き起こさない可能性が示唆された。しかしながら、個々の結果を見ると、朝食摂取+糖質摂取条件において、運動開始15分後に血糖値が60mg/dLを下回った者が9名中4名もいたため、今後、特に朝食摂取条件における、インスリン・ショック発生の個人差について検討する必要があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、日本人男性においては、朝食摂取の有無に関わらず、運動開始30分前の糖質摂取はインスリン・ショックを引き起こさないという知見を得ることができた。しかし、平均値では差が認められなかったものの、朝食摂取条件において、9名中4名において運動中に低血糖が認められたことから、インスリン・ショック発生に個人差が存在する可能性が示された。絶食条件においては運動中に低血糖を起こす者は1名もいなかったことから、個人差こそ存在するものの、むしろ朝食摂取条件においてインスリン・ショックが起こりやすい可能性もあり得る。今後、さらに被験者数を増やし、インスリン・ショック発生の個人差を規定する要因を探索すると共に、動物実験によりそのメカニズムを検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト実験においては、さらに被験者数を増やし、インスリン・ショックが発生する者がどのくらいの割合で存在するかを明らかとすると共に、血糖上昇やインスリン分泌に関わる血中ホルモン濃度を分析することにより、インスリン・ショック発生の個人差を規定する要因を検討する。また、動物実験においては、朝食摂取条件と絶食条件において、糖質摂取後における骨格筋の糖輸送担体の局在や、インスリンシグナルに関わる酵素の活性を調べることにより、メカニズムを検討する。
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Causes of Carryover |
年度末に実施した実験における血液分析の費用の支払いが、学内の締切に間に合わず、次年度の予算から支出することにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度も引き続きヒトを対象とした研究を行うため、ヒト試験に必要な消耗品の購入、血液分析費用、人件費に充てる予定である。また、動物実験によるメカニズムの解明を行うため、実験動物や分析試薬の購入に充てる予定である。
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