2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K12680
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
荒尾 雄二郎 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (40151146)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 健常人 / 唾液 / 持続感染ウイルス / トルケテノウイルス / ヒトヘルペスウイルス6型 / nested real-time PCR / 炎症関連因子 / ストレス応答因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウイルス感染症の発症とその重篤化を予防するために、健常人体内でウイルスを増え易くする未知の宿主因子を探索した。6名の健常人から安静時唾液を採取した。 1日の唾液採取は1回のみとした。各唾液検体から抽出した核酸溶液について、Nested real-time PCRでTTV DNAコピー数を計測し、2本鎖DNA特異的蛍光色素を用いて定量したDNA濃度で標準化した。 6名中3名がTTV DNA陽性であった。陽性者の唾液DNA 1 μg当たりのTTV DNAコピー数は100000 ± 8.15、22700 ± 3.48、及び1310 ± 3.79であった。2名の陽性者を対象に、睡眠計HSL101を用いて客観的睡眠時間を計測し、TTV DNAコピー数と睡眠時間の間の相関性を検討したが、有意な相関は認められなかった。また、3名のTTV DNA陽性者を対象に臭覚・視覚刺激を実施し、刺激の有無によるTTV DNAコピー数の増減を検討したが、有意差は認められなかった。 1名の被験者の78検体を対象に、α-アミラーゼ、コルチゾール、DHEA、17β-エストラジオール、プロゲステロン、分泌性IgA、テストステロン、及びインターフェロン-αを測定した。各生体因子の測定値の平均とその標準偏差は、それぞれ154±53 U/mL、0.0640±0.0451 μg/dL、101±47 pg/mL、0.968±0.471 pg/mL、43.9±33.2 pg/mL、36.5±18.9 μg/mL、4.14±1.08 pg/mL、及び20.8±53.3 pg/mLであった。TTV DNAコピー数と各測定値を比較したところ、17β-エストラジオール濃度、α-アミラーゼ活性との間に負の相関が、インターフェロン-α濃度との間に正の相関が認められた(それぞれ、r = -0.292、-0.480、及び0.330)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.5名の健常人から各40検体、1名の健常人から80検体の安静時唾液を採取したことは予定通りであった。 2.唾液検体中に存在した遺伝子増幅反応の阻害因子を除去するために2か月ほど余計に時間がかかり、HHV6 DNAコピー数の計測が遅れたことは予定外であった。 3.検体中のTTV DNAコピー数を計測したことは予定通りである。ただし、6名中3名の被験者がTTV DNA陰性であったことは予定外であった。 4.検体中の各種の炎症性因子/ストレス応答因子の濃度を計測したことは予定通りである。そして、これらの因子の中で、17β-エストラジオール濃度とα-アミラーゼ活性がTTV DNAコピー数と負に相関することを見出したことは予定通りの成果であった。 5.「睡眠時間の長短」と「臭覚・視覚刺激の有無」を利用してウイルスDNAコピー数に統計学的に有意に差のある検体群を効率良く収集する予定であった。しかし、これらの方策はTTV DNAコピー数にあまり影響せず、ウイルスDNAコピー数に大きな差のある検体群を効率良く収集することはできなかったことは予定外であった。「睡眠時間の長短」では、検体採取時期に平成27年度の被験者の「睡眠時間」が大きくは異ならなかったことが原因であると考えられる。「視覚・聴覚刺激の有無」では、これらの刺激を同時に複数の被験者で行ったことが被験者の精神的ストレスを減少させたことが原因であると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.検体から遺伝子増幅反応阻害因子を除去する件に関しては、平成27年度において条件検討が終了しており、平成28年度の検体収集と検体の前処理には問題は認められない。H28年度も6名の健常成人から安静時唾液を検体として収集することを予定している。 2.過去の準備実験からは、TTV DNA陰性であった被験者においてもHHV6 DNAは陽性であった。従って、H27年度の検討でTTV DNA陰性であった検体であってもHHV6 DNAは検出できると期待される。そこで、TTV DNAコピー数と同様に、平成27年度の検体についてNested real-time PCRでHHV6 DNAコピー数の定量評価を実施する。 3.H27年度の検討により、1名の被験者を対象にした調査から、唾液中のTTV DNAコピー数と相関する可能性のある3種類の生体因子、17β-エストラジオール、α-アミラーゼ、及びインターフェロン-α、を見出した。これらの相関は身体内でウイルスが増え易くなる機構を解き明かす手掛かりになると期待される。しかし、まずは、他の被験者でも同様の相関が再現されることを確認しなければならない。そこで、3名の健常成人を被験者として、これらの生体因子とTTV DNAコピー数 の間の相関の再現性を確認する。 4.H27年度の検討により、TTV DNAコピー数と上記3種類の生体因子の相関する可能性を指摘することができた。H28年度は、これらの生体因子がTTV DNAコピー数と同様にHHV6 DNAコピー数とも相関する否かも検証する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額(B-A)は,8,396円であった。この金額では,実験に必要な試薬や器具を購入するには不足であったので,次年度にまわした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額(B-A),8,396円は,ごく少額であるので,次年度にまわしても次年度の使用計画にほぼ変更は生じない。
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