2015 Fiscal Year Research-status Report
神経性圧反射機能を測定するウェアラブル機器開発と日常生活上の健康調査
Project/Area Number |
15K12682
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
加藤 有一 札幌医科大学, 医療人育成センター, 助教 (90363689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 豪一 札幌医科大学, 医療人育成センター, 准教授 (10167497)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自律神経 / 機器開発 / 圧反射 / 健康 / 血圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
病気を予防し健康的に日常生活を送る上で、家庭環境における健康状態が常時評価され、また管理されることが近年重要視されている。その中でも、血圧は血管健康指標として認知されている。 本研究の代表者は,この血圧を一定に保持する自律神経機能である、圧反射機序の副交感自律神経機能(神経性圧反射機能)を,器質的血管硬化度の影響を受けずに評価する脈波解析技術を特許出願している(特願2013-074027)。この技術は光センサーを使った脈波信号だけで、血圧調整に直接関わる自律神経機能を毎時計測できるため、日常生活における血圧状態の一部を常時知ることのできる非常に小型な機器作製が可能な点に特徴がある。 本研究では、この神経性圧反射機能の新規測定法を用いたウェアラブル機器開発と、これを使用し、日常生活における健康状態とその寄与要因を評価・解明するための調査を、若年者を対象に実施する。 血圧調節に関わる神経性圧反射機能は、起床-睡眠の日内リズムに深く関係しているだけでなく、姿勢変化や精神的ストレスなどに対処する脳の働きによっても影響される。個々人によって様々に異なる日常生活と自律神経機能の経時的な特徴を把握し、心理特性・状態検査を含む様々な健康状態との関係をより詳細に調査することで、若年者における心身の健康状態に関わるより多くの知見収集と、将来の大規模調査への足掛かりとしたい。 本研究は、実験室環境のみならず家庭環境において血圧調整機能を常時測定できるウェラブル機器を開発することで、健康問題に関わる諸研究を、日常生活上の調査研究にまで幅を広げることができる点で意義がある。また本研究が進展することで、将来的に、この機器を発展させ一般家庭における予防・先制医学や、看護・介護分野での応用が期待される点でも、今後の研究および事業展開等において重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究課題は、予算の減額に合わせ研究計画を若干変更し、神経性圧反射機能を日常生活上で連続測定するウェアラブル装置の開発を優先した。予備調査を重ねたところ、日常生活環境における体動の影響が予想以上に大きいため、これを軽減する光センサー構造とソフトウェア上でのノイズ除去方法を新たに考案し、試作を繰り返した(特許技術に当たる可能性があるため、光センサー構造および方法に関しては非公開)。現在、最終案を基に試作機を作製し、動作確認と予備調査を行っているが、はげしい運動をしない日常生活であれば体動の問題はほぼ解決できていることを確認済みである。なお、この試作機では、電気的な環境ノイズを可能な限り軽減し、かつ装着者の負担を減らすため、光センサーで計測される光電式脈波容積信号を無線(Bluetooth)で外部モニター機器へ送信し、外部モニター上で神経性圧反射機能の解析・記録を行う形式に特化して作製した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度からは、試作機を使い、日常生活上の神経性圧反射機能と心身健康との関連を20名程度調査する計画である。予定する事前測定項目は、1)血管健康度として血管スティフネス(IMT(頸部内中膜厚))および2)スティフネスパラメータβを超音波エコーにより、そして3)血圧を非侵襲1拍毎連続血圧計により、5~10分間測定し平均値と変動値を算出する。また、4)心理特性・状態項目として質問紙(STAI, STAXI-2, CES-D, LOT-R)により、それぞれ不安特性・状態、怒り特性、鬱状態、そして楽観性傾向を評価する。 日常生活上の自律神経機能評価は、試作機により神経性圧反射機能と脈拍数を連続的に自動計測する。また、行動パターン(起床、食事、他何をしているか)、眠気(VAS)や疲労度(Chandler状態質問紙)等は定期的に自己記録および観察記録する。 上記測定を1名につき3~7日実施する。これらのデータは、神経性圧反射機能の日内変動と行動・状態依存性および事前測定項目との関連について分析される。これにより、研究目的である「血圧変動を調整する神経性圧反射機能の日常生活における健康への寄与要因の特定」に関わる予備データを収集する予定である。 なお、試作機によるウェラブル測定データと心身健康との関連調査の予備結果は、当初の計画通り、オーストラリアのメルボルンで開催される国際行動医学会(International Society of Behavioral Medicine (ISBM) )(2016年12月7日~10日)での発表を予定している。
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Causes of Carryover |
予算の減額に合わせ研究計画を若干変更し、在宅環境における予備実験を省略し(従って、謝金および学会発表のための旅費を使用しなかった)、神経性圧反射機能を日常生活上で連続測定するウェアラブル装置の開発を優先したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試作機を完成させたことで、これを用いた調査研究に費用(謝金)を使用する。平成28年度は当初の計画を若干拡充する。在宅環境における日常生活上の神経性圧反射機能を試作機により測定し、参加者の行動・状態依存性との関連を調査する。また、試作機によるウェラブル測定データと心身健康との関連調査の予備結果は、当初の計画通り、オーストラリアのメルボルンで開催される国際行動医学会(International Society of Behavioral Medicine (ISBM) )(2016年12月7日~10日)での発表費用として旅費を使用する。
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