2016 Fiscal Year Research-status Report
青少年の「メタ認知能力」に焦点をあてた安全教育方法の開発
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15K12684
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
小川 和久 東北工業大学, 教職課程センター, 教授 (00224098)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 学校安全 / 安全教育 / 交通安全 / 青年期 / メタ認知能力 / 意思決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
青年期にある中高生を対象に、意思決定に焦点をあてたメタ認知能力向上のための自転車 安全教育プログラムを開発した。H27年度に開発した「自己の行動の姿を振り返る」教育プログラムに加え、H28年度は、「自らの意思決定の傾向を振り返る」教育プログラムを新たに開発した。このプログラムの内容は、主に次の4つのステップから構成される。①映像教材による他者観察:急ぎ・焦りの状態での自転車運転のイメージ化、②意思決定の自己診断とグループ診断、③ワークシート記入とグループ討議:リスクテイキングを助長(抑制)する心の声、④行動目標の設定。 とくに、②③のステップに関しては、「信号の変わり目」「一時停止」「全体のスピード」の3場面を設定し、リスクテイキングを助長する心の声(悪魔のささやき)と抑制する心の声(天使のささやき)の大きさを自己診断させている。さらに、各自の自己診断の結果を一つのボードに転記し、グループ内で意思決定の傾向が可視化される教材を活用することで、内面のリスク要因に対するメタ認知を促すこととした。 実際に高校生を対象に、この教育プログラムを試行したところ、以下の結果を得ることとなった。①リスクテイキングを助長(抑制)する心の声の大きさには個人差が存在する。②リスクテイキングを実行するかどうかに関しても個人差が存在する。③速度選択に関する意思決定については、全体的にリスクテイキングを助長する声が強く、実際に速度を上げる生徒の比率が高かった。④リスクテイキングを助長する心の声を分類すると、内的環境(一人での運転、はやる気持ちなど)、社会的環境(集合時間、部活など)、外的環境(雨天、下り坂、人通りの少なさなど)の3要因が背景にあることが分かった。内面的なリスク要因を扱ったことから、生徒が設定する行動目標に関しても、個別の課題を意識した目標が数多く提案されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,メタ認知能力向上に焦点をあてた自転車安全教育プログラムを開発することであり、H28年度は意思決定という内面のリスク要因を客観視する教育手法を新たに開発した。外的環境(道路交通環境)への適応に加え、内的環境(感情・意思)への適応を組み合わせることで、メタ認知能力を相乗的に向上させるという教育的アプローチを具体化している。 また、個人の内面的世界で展開される意思決定を測定し可視化する教材を用いたことにより、グループ討議を介しての自己理解がより一層促されるなど、教材開発に関しても大きな進展があったものと判断する。実際に,高校生を対象に教育プログラムを実施し,その学習プロセスの分析結果からも、プログラムの適切性が確認できた。プログラム進行や教材に微調整は必要なものの,新たな自転車安全教育の方法を一つ確立できたものと考えている。 ただし,開発した教育プログラムの評価については,さらに追加調査が必要だと考えている。教育に参加した生徒の態度・行動の変化を十分に測定するには至っていないからだ。H29年度の教育実施および効果測定においては,もう少し精緻な分析が可能となるよう、綿密な実験計画を立案し、実施したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き,メタ認知に焦点をあてた自転車安全教育プログラムを開発していく予定である。H27~H28年度に開発した2種類の教育プログラムを活用して、教育効果測定の調査に資源を集中させ、実証的データを蓄積していく予定である。そのために、協力校の生徒の通学風景を観察し、改善すべき自転車行動を抽出した後、教育を実施する計画を立案するものとする。教育前後で行動変容・態度変容が見出されるのか、厳密な効果測定の分析を行う予定である。 一方で,成果物として、開発した教育プログラムの内容と実施マニュアルを冊子としてまとめ、関係者に広く情報発信していきたい。学校安全の分野において、中高生の自転車事故の削減は喫緊の課題である。効果的な教育手法を広く普及させることで、研究成果の共有と社会還元を図りたいと考えている。
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Research Products
(1 results)