2015 Fiscal Year Research-status Report
定期的な有酸素性運動は中高齢男性における勃起不全を改善するか?
Project/Area Number |
15K12692
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
前田 清司 筑波大学, 体育系, 教授 (30282346)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 勃起機能 / 有酸素性運動能力 / 血管機能 / テストステロン |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、我が国の成人男性の約4人に1人、50歳以上の2人に1人が勃起不全を有している。勃起不全は、心理的な要因や血管機能の低下が主な原因であるが、中高齢者における勃起不全の大半は動脈硬化などの血管機能の低下に起因する。血管機能の低下は心血管疾患の独立した危険因子であり、勃起不全を有する者はそうでない者に比べて、心血管疾患の発症率が高いことが報告されている。これまでに、我々は定期的な有酸素性運動により血管機能が改善することを明らかにしてきた。しかし、血管機能に関連する勃起機能と有酸素性運動能力の関連については明らかにされていない。そこで本研究では、勃起機能と定期的な有酸素性運動との関連について横断的および縦断的に検討することを目的とした。 本年度は、成人男性における勃起機能、有酸素性運動能力、血管機能の関連を検討することを目的とし、横断的な検討を実施した。成人男性を対象に、勃起機能、有酸素性運動能力、および血管機能を測定した。勃起機能は、「国際勃起機能スコア5(International Index of Erectile Function 5: IIEF5)」により評価し、血管機能は、「脈波伝播速度(PWV)」により評価した。その結果、勃起機能の指標であるIIEF5のスコアと有酸素性運動能力、および血管機能との間には有意な関連が認められた。一方、男性ホルモンである血中テストステロン濃度と勃起機能との関連についても検討したが、現在までに得られているデータでは両者に有意な関連は認められていない。これまでの実験結果から、成人男性において、勃起機能と有酸素性運動能力および血管機能は関連する可能性が示唆されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1年目の本年度は、研究実施計画通りに、近隣地域在住の成人男性を対象とした横断的検討を実施した。対象者の募集は、地域の情報誌に募集記事を掲載することにより実施した。その後、実験内容の説明、および対象者の同意を得て測定を行った。本年度の横断的検討では、IIEF5というアンケート調査により勃起機能を評価した。また、有酸素性運動能力の指標である最大酸素摂取量、血管機能の指標である動脈硬化度、および血中テストステロン濃度を評価した。その結果、成人男性における勃起機能と有酸素性運動能力には有意な正の相関関係が認められた。このことは、有酸素性運動能力の高い男性ほど、勃起機能が高い可能性を示唆している。また、勃起機能と動脈硬化度との間にも有意な関連が認められたことから、動脈硬化度の増大は成人男性における勃起機能の低下に関連する可能性が示唆された。以上より、本年度は実験実施計画書通りに研究を遂行し、期待通りの成果が得られていることから、研究はおおむね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度と同様、2年目以降も研究実施計画に沿って研究を進める予定である。2年目については、1年目と同様に横断的検討を実施し、対象者数を増やすことで結果をより確実なものとする。地域情報紙などにより、地域在住の成人男性を募集し、測定を実施する。測定項目は、アンケート調査による勃起機能、有酸素性運動能力の指標である最大酸素摂取量、血管機能の指標である動脈硬化度、および血中テストステロン濃度とする。初年度のデータと併せて、成人男性における勃起機能と有酸素性運動能力、血管機能との関連について検討する。3年目については、1年目および2年目に結果を受けて、中高齢男性における定期的な有酸素性運動が、勃起機能を改善するか否かについて縦断的な検討を実施する。対象者は、地域情報誌により募集する。ただし、実験結果に影響を及ぼす可能性がある「日常的な運動習慣を有する者」および「心血管疾患の既往歴を有する者」は対象としない。12週間の有酸素性運動の介入前後において、アンケート調査による勃起機能、最大酸素摂取量、動脈硬化度、および血中テストステロン濃度を評価し、それらの変化および関連性について検討を行う予定である。本研究により、成人男性における勃起機能と有酸素性運動能力および血管機能との関連が明らかになると予想される。
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