2015 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋再生と増殖因子GFXに関する研究-サルコペニア治療を目指して
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15K12699
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
葛谷 雅文 名古屋大学, 未来社会創造機構, 教授 (10283441)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 老化 / サルコペニア / 動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋では加齢、廃用、脱神経など様々な要因で障害が起こるとされている。障害後の骨格筋細胞のアポトーシスや筋衛星細胞の再生不全は、サルコペニアの発症・進展の要因の一つであると知られている。我々は近年動脈血管壁に障害を誘導した際に、障害細胞、特にアポトーシスを起こした細胞で発現が亢進し、放出されるparacrine 増殖因子(GFX, 特許出願中)を見出し、GFX が障害後の組織修復(再生)に重要な役割を果たしていることを明らかにした。しかし、GFXが骨格筋細胞から分泌するか否かならびにその機能と運動のGFX発現への影響に関してはまだ明らかになっていない。そこで、まず、研究代表者はGFXが障害骨格筋細胞から分泌され、骨格筋細胞再生への関与を明らかにする為、野生型マウス(9週齢, 雄, C57BL/6J)の片側下肢骨格筋に心臓毒(Cardiotoxin、CTX,10μm/0.2ml)投与による骨格筋障害モデルを作成し、経時的に骨格筋を採集し、生化学ならびに組織学検討を行った。その結果、CTX投与三日目にコントロール群と比較して、GFXのmRNA(約20倍)ならびにGFX蛋白の発現亢進を確認した。筋芽細胞株C2C12細胞においても種々の方法でアポトーシス誘導をかけるとGFXのmRNA・蛋白発現亢進が確認された。更に、細胞実験において、GFXによるC2C12細胞のmigrationと増殖能の亢進が確認された。更に、C2C12細胞におけるGFX刺激によるAkt、mTOR、Erk1/2並びp38MAPKのリン酸化亢進を認めた。まだ、プレリミナリーな結果(今後n数を増やして追加実験をする予定)ではあるが、GFX中和抗体投与により、CTX投与後の骨格筋のリモデリングの悪化傾向を認めた。これらの結果から、間違いなく骨格筋の障害によりGFXの発現を認めること、さらに細胞実験より骨格筋細胞にはGFXに対する受容体が存在していることが明らかになった。また骨芽細胞株を使用した実験からはGFXは受容体を介して骨芽細胞の増殖、遊走を刺激することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は、実験計画書の通りに研究を進め、おおむね成果を収めた。前半は、CTX濃度や投与量の調整を実施していたが、突然以前使用していたCTXのロットが輸入中止となり、新たなロットでの容量設定に苦労したり、マウス組み換えGFXの作成とラビット由来のGFXの中和抗体の作成に時間を要した。しかし、後半に実験をしっかり進めた結果、ほぼ計画通りに進捗している。また部分的に細胞実験によりGFXの受容体の存在、さらにシグナル経路に関しても明らかにし、当初の計画以上に進行している部分も存在した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.前年度に実施したGFX中和抗体を使用したマウス骨格筋障害に及ぼす影響の追加実験を実施する。 2.加齢によるGFX ならびに受容体の発現の影響を見るために、我々が以前よりサルコペニアのモデルとして使用している加齢促進マウス(senescence-accelerated mouse prone 10: SAMP10)を用い、8週齢の若いマウスと既にサルコペニアが出現している10カ月齢のマウスの骨格筋でのGFXおよびその受容体の発現の程度を比較検討する。 3.運動介入(2か月間のトレッドミル負荷)を行ったSAMP10マウスと非介入のマウスのGFX発現の比較検討をする。 4.SAMP10マウスを使用してCTXによる下肢骨格筋障害後のGFX および受容体の発現を野生型と比較検討するとともに、障害後に2種類の方法(リコンビナントGFX注射とad-GFX感染)でGFXの組織再生促進効果を検証する。
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