2015 Fiscal Year Research-status Report
身体的不器用さをもった医療少年院在院者への認知機能強化介入プログラムの有効性
Project/Area Number |
15K12722
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宮口 英樹 広島大学, 医歯薬保健学研究院(保), 教授 (00290552)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石附 智奈美 広島大学, 医歯薬保健学研究院(保), 講師 (50326435)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 医療少年院 / 不器用 / 発達障害 / AMPS / プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、医療少年院入院中の少年を対象に、質的な日常生活活動分析法に基づいた身体的不器用さの要素を取り入れた介入プログラムを開発実施し、運動とプロセス技能評価(AMPS)を加えた効果検証を行うこと、そして得られた結果を特別支援学校等で実施するための検討を行うことであった。目的遂行のために、「プログラムの改良」、「効果検証ツールの選定」、「プログラムの展開」を計画した。 平成27年度は、児童精神科医である連携研究者と協力し、プログラムの改良、および効果検証ツールの選定を実施した。プログラムは対象となる医療少年院にて8 名に対し80分を週1回で合計10回実施した。評価は、観察型の作業遂行能力を測定するAMPS及び不器用さの評価としてMovement-ABC2、AMPSでは、少年院内では安全を考慮し制約があるため、あらかじめ刑務教官と相談し、K-6シーツと掛け布団カバーの交換、J-4掃除機をかける・軽めの家具を動かす、J-5モップをかける、の3つの平均的な課題の中から2課題を選択する方法とした。分析は、COGOT介入前と介入3ヶ月後の運動技能能力値(ロジット) 、プロセス技能能力値(ロジット)の値を比較した。介入前の運動技能能力値では、カットオフ値の2.0を下回る少年はいなかったが、プロセス技能能力値では、カットオフ値の1.0を下回る少年は5名が該当した。介入の結果、COGOT介入後の運動技能能力平均値、プロセス技能能力平均値がいずれも有意に改善し(P<0.05)、介入後は全員のプロセス技能能力値がカットオフ値を上回った。M-ABC2では、NUTSとBOLTS課題で有意に時間が改善した(P<0.05)。 本研究で、プロセス技能能力値が自立したADL遂行の目安であるカットオフ値を上回る改善を示したことは、退院後の社会復帰に向けた支援を行う目安になる意義があると思われた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
医療少年院における介入プログラムの効果検証は、概ね計画通りに実施し、有益な結果を得ることが出来た。本研究のデザインは、コントロールを置かない前後デザインによるため、純粋に点数の改善がCOGOTの導入によるものかどうかは明確ではない。しかしながら、筆者らが医療少年院においてコントロールを設定したCOGOTの研究(Miyaguchi et al 2014)では介入群のみM-ABC2で有意差が見られた項目があったことから、今後検証が必要であるが、本研究の結果もCOGOTの効果と推察される。 本研究の目的の一つである、不器用さを評価する効果検証ツールの選定に関しては、静的・動的人物画の客観的指標と、不器用さとの関連性を十分に検討するに至らなかった。その理由としては、描画で動的な人物画を客観的に評価できる指標が確立されていないことが要因である。そのため、平成28年度はこの部分についても検討を進める予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度に得られた結果を基により効果的なプログラムの作成と医療少年在院者への効果検証、および特別支援学校、幼稚園、小学校児童への身体的不器用さのスクリーニング検査、効果検証簡易ツールの開発を進める。本研究により、改良版COGET、COGOTの効果が実証されれば、例えば、教育委員会等行政地区単位でのより広範な効果検証を前向きコホート研究として計画する可能性がある。 更に刑務所において知的障害をもった成人受刑者、小学校にてスクリーニング検査で要支援となった児童、特別支援教室・特別支援学校の児童を対象に改良版COGET、COGOTを施行する。刑務所については一施設において既に現行版COGOTを導入中である。また精神科病院入院中の認知症患者へのリハビリプログラムや、介護老人保健施設の高齢者への転倒予防プログラムとして導入も検討する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、予定していた物品費のうちM-ABC2を海外より直接購入することが出来、差分が生じたためである。論文化に伴う経費については、医療少年院での公表に係る承認を得るために相当の時間を要したため平成28年度の経費として使用する。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、調査対象施設を拡大する予定である。そのため、次年度使用額を用いて、検査道具数を増やし、検査時間の効率化を図る。平成27年度に行った研究結果の公表に係る経費についても次年度使用額から使用する。
|
Research Products
(1 results)