2016 Fiscal Year Research-status Report
乳幼児の把握力における成長曲線の検討ー乳幼児用握力計及び筋電図計を用いての検証ー
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15K12729
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
田口 喜久恵 常葉大学, 保育学部, 客員研究員 (40440614)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 俊郎 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (80249242)
齋藤 剛 静岡福祉大学, 子ども学部, 教授 (60413259)
遠藤 知里 常葉大学短期大学部, 保育科, 准教授 (90400704)
早川 健太郎 名古屋経営短期大学, 子ども学科, 講師 (70740421)
栗田 泰成 常葉大学, 健康科学部, 助教 (30712426)
今村 貴幸 常葉大学, 保育学部, 講師 (60758944)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 乳幼児 / 発育発達 / 運動発達 / 把握力 / 筋力 / 乳幼児用握力計 / 出生体重 / 新生児 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は27年度に引き続き、市町の乳幼児健診、保育所等で0~2歳児(3歳を含む)の把握力測定を行った。平成28年度は新生児(17~28日)について集中的に測定する機会があり、新生児の原始把握反射についての新な知見を得ることができた。 平成28年度の研究課題は、乳幼児の運動発達開始時期と把握力発達の関係及び出生体重が把握力発達にどのように影響するかについて調査し、学会発表を行った。 乳幼児の誕生からの運動発達(首のすわり、寝返り、ハイハイ、自立歩行)の開始時期と把握力との関係の調査では、1歳~3歳までの幼児について、各運動発達開始時期を〈早期発達〉、〈通常発達〉、〈遅期発達〉に分け、各運動発達開始時期別の把握力平均値を比較したところ、首のすわり、寝返り、自立歩行の開始時期と把握力平均値は有意に早期発達>遅期発達となった。ハイハイについては有意ではないものの早期発達>遅期発達となり、4つの運動発達開始時期について、通常より遅い場合、把握力が低いという結果となった。 また出生体重と把握力発達の関係調査では、(3ヶ月~1歳7ヶ月)について、月齢発達を3グループ(3,4,5ヶ月、6,7ヶ月、18,19ヶ月)に分け、各月齢グループの出生体重を四分位(下位群:~25%、中下位群:25~50%、中上位群:50~75%、上位群:75~100%)として比較した。その結果、3,4,5ヶ月及び6,7ヶ月では出生体重が低いと有意に把握力も低くなった。18,19ヶ月では有意ではないものの出生体重下位群の把握力が最も低くかった。すなわち全ての月齢グループにおいて出生体重下位群の把握力が最も低いという結果であった。 以上のような課題に取り組み、これまで不明であった、0~2歳の把握力と運動発達経過について実証的な検証がすすみ、出生からの筋力及び運動発達経過の一端を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は対象児0~2歳(3歳含む)の把握力測定について順調に量的拡大を図ることができ、現在まで測定対象児は1000名以上を越え、当初の計画以上にデータを収集することができた。とくに新生児に対して集中的に12日間の把握力調査ができたことは、これまでにない調査であり新たなデータを収集することができた。また筋電図計を併用しての把握力調査も予備調査を繰り返し、順調に推移している。 乳幼児における筋力発達については多くの不明な点が残されており、平成28年度に取り組んだ乳幼児用握力計を用いての実証的な研究課題において、新たな知見が見出され、これまで不明であった筋力発達の一端について以下のような結果を得ることができた。東海学校保健学会で発表した、1歳~3歳までの「幼児の筋力発達と運動発達の様相」では把握力発達と運動発達開始時期との関係性が実証的に示された。この研究によって、運動発達の遅延について、把握力が発達障害の指標の一つとして提示される可能性が示唆された。この発表に対して優秀演題賞を受賞した(発表者 齋藤剛)。 また、平成28年度は新たに出生体重と把握力発達との関係の研究課題に取り組んだ(静岡県小児保健学会発表、日本発育発達学会ポスター発表)。その結果、出生後の筋力発達(把握力)において、出生体重の影響があることが実証的に検証され、妊娠期間の母体の健康管理の重要性が示されたことは成果といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は把握力発達における一側優位性(利き手)の研究に取り組み、学会発表を行った。平成29年度はその後新たに収集した0~3歳の把握力と利き手に関するデータをまとめ論文作成に取り組んでいく。また平成28年度東海学校保健学会にて発表した幼児の運動発達開始時期と把握力発達との関連に関する研究課題についても、その後収集したデータを合わせて整理を行い、研究を深化させ、論文作成に取り組んでいく。 さらに新生児の12日間の原始反射による把握力調査については「新生児の生活場面における把握力の動向ー乳幼児用握力計による検証ー」と題して平成29年度第17回赤ちゃん学会において発表を予定している。 平成29年度はさらに乳幼児の把握力測定データを蓄積し、新たな課題として、幼児の筋力発達と姿勢に関する研究に取り組む予定である。子どもの姿勢の劣化が指摘されて久しいが、乳幼児の筋力発達に関する実証的データがないため、具体的支援に結びつけることが難しかった。乳幼児用握力計を開発したことより、乳幼児の姿勢発達と筋力発達の関連を実証的に調査し、新たな知見を見出すことができれば、保育・教育現場の姿勢教育の一助に供することができる可能性がある。 以上のように、平成29年度はこれまで積み重ねた研究課題と、新たな課題について調査を進め、乳幼児の筋力発達と運動発達に関する実証的解明を目指していく。
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Causes of Carryover |
平成28年度の科研費研究会議に出席できなかった研究者や学会に不参加の研究者があり、各研究者で旅費に差額が生じたが同大学内の場合は再配分した。また測定協力者の謝金も予定より少額で済んだことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は新たに参加する学会もあり、その旅費を予定している。また科研費研究最終年となり、測定により収集したデータの処理や文献整理等の費用も計画している。
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Research Products
(5 results)