2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K12746
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堂野 主税 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (60420395)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脂質二重膜 / リポソーム / 両親媒性DNA / DNAナノ構造 / 膜変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脂質二重膜に強く結合する能力を化学修飾により導入した様々なDNA ナノ構造を合成し、そのDNA構造に応じた脂質膜形状変化を調べ、設計した膜構造変化の誘導が可能であることの実証を目指す。本年度は、さまざまな構造をもつDNAナノ構造体の構築を行い、種々の条件下における脂質二重膜への結合評価を行った。また、DNAの結合にともなって、脂質二重膜の大きな構造変化の誘起を実現するために、脂質膜に対する強い相互作用が可能な疎水性修飾DNAの創製および最適化を実施した。 平面状のDNAナノ構造を、クロスオーバーを用いるDNAタイル、および、一本鎖DNAタイル法(SST)を用いて構築した。構築した平面状DNAナノ構造に、疎水性化学修飾を導入し、脂質二重膜の表面に結合することを確認した。脂質膜との結合能は、化学修飾の位置、修飾数、溶液のイオン濃度などに強く依存することを明らかにした。さらに、SST法を用いて、曲率を有するDNAナノ構造の構築を行った。原子間力顕微鏡、および、電子顕微鏡観測を用いて、DNAナノ構造の形成を確認した。脂質二重膜との結合能は、曲率の有無(凸面、凹面、平面)により大きく変化し、凸面型の構造が結合に有利であることを見出した。 脂質二重膜表面へのDNAの結合が、脂質膜の形状により大きな摂動を与えるよう、非常に強い疎水的相互作用により脂質膜と結合する疎水性修飾DNAの創製を行った。DNAのリン酸ジエステル部位にオクチル基を導入したリン酸トリエステル型構造を、連続して組み込んだ両親媒性のDNAを合成した。同両親媒性DNAが、疎水性部位を脂質膜に深く挿入する新しい結合様式を介して、強固に結合することを明らかにした。本両親媒性DNA-脂質膜の結合は、膜結合タンパク質にみられる結合様式を模倣するものであり、本研究が指向するDNAを用いた脂質膜形状変形に有用である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂質二重膜に結合するDNAを用いた膜構造変化を指向して、本年度は、1)疎水性化学修飾を含む平面状および曲率を有するDNAナノ構造の構築と脂質二重膜への結合評価、および、2)脂質二重膜に強く結合する疎水性修飾の最適化、に関する研究項目を実施した。27年度実施計画にあるチューブ型のDNAナノ構造を用いる研究に関しては、チューブ型DNAナノ構造の設計と構築は終了しており、脂質膜との詳細な結合評価を実施中である。疎水性修飾数や位置、イオン濃度などが脂質膜とDNAへの結合に与える効果の調査および最適化を行った。また平成28年度実施予定である、曲率をもつ種々DNAナノ構造についての構築を行っており、概ね当初計画に従い進捗している。 1)疎水性化学修飾を含む平面状および曲率を有するDNAナノ構造の構築と脂質二重膜への結合評価:平面状の二次元DNAナノ構造を、DNAタイル、および、一本鎖DNAタイル法(SST)により構築し、その脂質二重膜との結合について、疎水性修飾、イオン濃度等の異なる条件下で評価を行った。さらに、SST法を用いて、曲率を有するDNAナノ構造(凸型、凹型、チューブ型)の構築を行い、原子間力顕微鏡、電子顕微鏡観測により、構造形成を確認した。それぞれのDNA構造に関して、脂質膜との結合に関する評価を進めている。 2)脂質二重膜に強く結合する疎水性修飾の最適化:脂質二重膜に疎水修飾を施したDNA部位を挿入することにより、脂質膜と強固に結合する両親媒性の人工DNAの創製を行った。9塩基に相当する疎水性DNA部分(オクチルリン酸トリエステル構造)を導入した両親媒性DNAが、脂質膜に結合することを蛍光共鳴エネルギー移動法、蛍光顕微鏡観測などを用いて明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに構築した種々のDNAナノ構造を用いて、脂質二重膜への結合および脂質膜に与える形状変化について評価を進める。一本鎖DNAタイル法(SST)などを用いて調製したチューブ状構造のDNAを用い、脂質膜に与える効果を調査する。標的となる脂質二重膜としてリポソームを選び、最適化したDNAに対する疎水性化学修飾や結合条件を用いて、電子顕微鏡、蛍光顕微鏡観測等によりリポソームの構造変化を追跡する。チューブ状構造のDNAに対する疎水基修飾面の異なるDNAチューブ(筒内面、外面、 未修飾体)を調製し、脂質膜への結合面を制御することにより、脂質膜変形の制御と実証を目指す。また、脂質二重膜に結合する両親媒性人工DNAに関して、より効果的に脂質膜に作用するよう、疎水性修飾およびその配列の最適化を引き続き実施する。 前年度までに調製した平面状および曲率をもつDNAナノ構造を用いて、それらの脂質二重膜への結合と曲率の相関を精査する。DNAナノ構造構築については、前年度同様、SST法のほかDNAオリガミ法を用いる。湾曲構造や疎水性修飾の異なる種々DNAナノ構造の結合能を、原子間力顕微鏡(AFM)による構造観測やSPR測定による定量などから評価を進める。DNAナノ構造により誘導される脂質膜の構造・形状変化のほか、脂質膜の物理的特性(強度、弾性率)の変化をAFMによる物理パラメータ計測による評価も実施する。
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Causes of Carryover |
使用経費および研究実施内容に関して概ね計画通りであるが、想定より8%程度使用額が少なく当該分を次年度に繰り越す。差額は主に物品費に起因しており、研究推進の核となるDNA合成、構造解析関連の消耗物品として計画していたものである。より幅広いDNA構造体の合成・評価を進める必要があると考える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画に従い、繰越金は、DNA委託合成、DNA化学合成、およびそれに関連する消耗物品を中心に充当し、計画研究推進に活用する。
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