2016 Fiscal Year Research-status Report
次世代チオクロモン型ケージド化合物の創成と新規細胞セレクション法の開発
Project/Area Number |
15K12748
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
垣内 喜代三 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (60152592)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生体分子 / ケージド化合物 / チオクロモン誘導体 / アンチセンスオリゴ核酸 / 水溶性 / シクロデキストリン / コレステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、我々のチオクロモン型光解離性保護基(TCM)を用いた新規ケージド化合物を合成し、光照射(アンケージング)により、保護されていた生命分子が機能を復元する時期と場所を高度に制御するだけでなく、その保護基がアンケージング時に極めて強い蛍光を発する四環性化合物へ変換されるという特性を最大に活かして、その蛍光強度測定による脱保護反応進行度の定量化を行う。さらに、その成果を新規細胞セレクション法の開発に応用することを目的とした。 昨年度に、TCMケージドアンチセンス分子がルシフェラーゼの発現に影響を与えなかったのに対し、光照射下ではアンケージングが進行し、アンチセンス分子としての機能が復元し、ルシフェラーゼの発現が抑制されていることを見出した。しかしながら、本年度での詳細な検討より、蛍光性を示す極めて複雑な中間体を経て本反応が進行し、アンケージングの効率も低く、ケージドアンチセンス分子の合成効率が低いことから、研究の続行を断念した。 一方、ルシフェラーゼ阻害剤として知られているレスベラトールの三つの水酸基をTCMでマスクしたケージド体の詳細な検討を行い、2-もしくは3-ケージド体を用いて、光照射によるアンケージングを行った結果、照射時間とともに四環性化合物の蛍光発光は増大し、これに相関してルシフェラーゼ阻害能が増強していくこと見出した。しかし、これらケージドレスベラトールの水溶性が低く、水溶液中でのアンケージングの効率が非常に低いことが判明し、今後、水溶性を有するTCMの開発を目指す必要があった。 さらに、水溶性分子でコレステロールを選択的に取り込むシクロデキストリン(CD)に着目し、TCMケージドβ―メチルCDを合成することで、水溶液中での反応を検討した。現時点で、水溶液中でアンケージングがスムーズに進行し、同時に蛍光発光強度の増加も見られる予備的知見が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ケージドアンチセンスの検討では、光照射によるアンケージング時に形成される発光性中間体の構造決定に多くの時間を費やしたため、他の展開に遅れがでた。一方で、低分子の生理活性分子であるレスベラトールのアンケージングでは、蛍光発光の増加度合いと生理活性の発現に極めて高い相関性があることを見出し、蛍光測定による生理活性の復元の定量化に成功した。しかしながら、この定量化は有機溶媒中で観察されるものの、水溶液中ではTCMの水溶性の低さによりアンケージングの進行が遅いという結果を得、我々のチオクロモン型光解離性保護基に水溶性を付与する新たな課題が見つかった。一方で、水溶性の生理活性分子であるシクロデキストリン誘導体への展開では、予備的検討で、水溶液中でもアンケージングが進むことが判明している。このように、フローサイトメトリーへの展開までにはさらに若干の時間が必要で、やや遅れていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後については、水溶性チオクロモン型光解離性保護基を開発し、それを用いたケージド分子の機能を調査し、水中でのアンケージングと蛍光発光特性に相関性がみられることが確認できれば、フローサイトメトリーへの応用の可能性を検討する予定としている。これらの結果を踏まえ、光照射により細胞内でアンケージングされ、機能が抑制されている細胞のみをアンケージング時の蛍光を指標にしたフローサイトメトリーによりセレクションするという最終目標の達成を目指す。
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Causes of Carryover |
細胞内評価への展開を予想しそれに伴う試薬の購入を予定していたが、蛍光を発する中間体の構造決定に時間を要した。また、ターゲット分子としてレスベラトロールを選択し、我々が開発したチオクロモン型光解離性保護基を用いたケージドレスベラトロールの合成と光脱保護反応を検討した。有機溶媒中では反応の進行、すなわち生理活性の復元を蛍光強度で定量的に評価できたが、チオクロモン型光解離性保護基の疎水性が高く、したがって疎水性のケージド化合物の水に対する難溶性も向上し、水溶液中では反応効率が非常に悪かった。水溶性向上には保護基の改良が必要であり、その検討に日数を要することから、年度内の計画完了は困難となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでにケージドアンチセンス分子のアンケージング時の複雑な中間体の構造決定は完了し、次年度は、水溶性チオクロモン型光解離性保護基の開発に必要な経費とともに、細胞実験など当初予定していた試薬の購入などに充てる。
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