2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K12755
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川井 清彦 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50314422)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | DNA / 1分子計測 / blinking / 蛍光相関分光 / 速度 / 超らせん |
Outline of Annual Research Achievements |
2重らせん構造を有するDNAは、線上でひずみの無い状態では、約3.6 nm(10.5塩基対)辺り1回の割合で互いに右巻きに巻きついている。生体内においてDNAは、2重らせんをほどくように(2本の鎖の巻きつき回数を減らすように)ねじられた状態で存在し、このようなねじれは負の超らせん(negative super coil)と呼ばれる。負の超らせんによりDNAはよりほどけやすくなり、ひずみの無い状態と比較してよりダイナミックに運動していると予想される。これにより、局所的に塩基対が解離したDNAほつれ構造、より長い塩基対解離に伴い生じうるDNA 3重らせん等、DNA局所構造の形成が促進されていると考えられるが、これら現象にリアルタイムでアプローチ可能な分析手段が無く、DNA超らせんのダイナミクスは明らかになっていない。研究代表者は、蛍光分子を1分子レベルで見たときに現れる物理化学現象である蛍光の点滅過程(blinking)に注目し、蛍光分子を核酸中に導入し、核酸構造を用いて蛍光点滅の制御を試み研究を行っている。27年度は、DNA超らせんの結果生じるDNA3重鎖構造を1分子レベルで検出するため、3重鎖構造の断面図とほぼ同じ大きさとなる蛍光分子Cy3に注目した。Cy3のblinkingを2重鎖構造、3重鎖構造で比較したところ、3重鎖構造特異的な挙動を示すことがわかり、Cy3を用いて超らせんにより誘起される3重鎖構造の検出が可能であることが示された。28年度は、Cy3のblinkingのダイナミクスの詳細を検討すると伴に、1分子計測を行った。その結果、blinking観測条件ではCy3の光退色が非常に早いことがわかり、blinkingの点滅間隔が短すぎることがその主な要因であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初分析に利用予定であった蛍光分子Cy3では、蛍光点滅の間隔が短すぎるため、1分子計測には好ましくないことが判明した。これにより、種々のCy3以外の分子を使用せねばならず、有機合成から再度検討する必要が生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
DNA超らせんを研究するためには、一番単純なモデルが数千塩基対のプラスミドDNAとなるため、大量調整ができない。そのため、1分子「レベル」ではなく、真の1分子検出が必要となる。blinkingによる検出の達成は、原理的には本手法を1分子検出へと応用出来ることを意味するが、実際の1分子検出のためには、蛍光分子の光耐久性、測定感度、など、クリアすべき条件が多数存在する。28年度は蛍光分子Cy3を用いた1分子検出を検討したが、測定条件での光耐久性が不十分であるという問題に直面した。29年度は、Cy3の類似骨格を有する種々のシアニン系色素に注目し、blinkingの点滅間隔がCy3に比べ長く、より長時間blinkingを観測可能な蛍光分子のスクリーニングを行い最適な蛍光分子を選出する。得られた蛍光分子を用いて、超らせんダイナミクスの検討を行う。
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Causes of Carryover |
当初分析に利用予定であった蛍光分子Cy3では、蛍光点滅の間隔が短すぎるため、1分子計測には好ましくないことが判明した。これにより、種々のCy3以外の分子を使用せねばならず、有機合成から再度検討する必要が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
種々の蛍光分子で修飾した核酸の合成費、研究打ち合わせ・学会における成果発表のための旅費、および、論文添削費に使用する。
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Research Products
(14 results)