2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K12758
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
品田 哲郎 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (30271513)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | イソプレノイド / 幾何異性 / 生体膜 / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドリコールは炭素数80を超える長鎖ポリイソプレイド分子であり、生体内においては膜内外への糖鎖輸送を担う重要な役割を果たしている。ドリコールはトランス型の3置換オレフィンとシス型の3置換オレフィンが混合した構造を有している。本研究では、いまだ合成例が報告されていない全トランス型長鎖イソプレノイドをドリコールアナログとして設計・合成し、生体膜との相互作用と機能を明らかにする。立体化学が規制されたドリコールアナログと生体分子であるドリコールとの機能の違いを明らかにすることを目的とする。これより全トランス型アナログが細胞膜上に安定に分子を固定するための碇分子となりうるかを確かめる。
昨年までに、イソプレン単位が20連結した、炭素数100からなる全トランス型ドリコールアナログ分子の合成を完了した。本年度は生体膜との作用を検証するためにアリルアルコール部位のリン酸化を試みた。長鎖イソプレノイドのリン酸化の例はほとんど報告例がないため、まずモデル化合物としてゲラニオールを用いたリン酸化を試みた。亜リン酸クロリド試薬を作用させたのち、過酸化水素を用いて酸化するスタンダードなリン酸化を試みたが目的物を得ることができなかった。反応条件を精査したがいずれも複雑な混合物を得え、実際にリンの核磁気共鳴スペクトル解析からはリン酸由来と思われるシグナルが確認できたものの、複数のシグナルが確認された。この点を改善することが次年度の検討課題となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全トランスドリコールの合成経路が確立できたものの、続くリン酸化が思うように進行していない。複雑な混合物を与えているのみならず、副生成物の単離と解析が困難なことが壁となっている。温和なリン酸化をいかにして行うかが目下の重要課題である。
|
Strategy for Future Research Activity |
アナログとドリコールの構造的な違いは末端アリルアルコール部位にある。ドリコールは飽和のアルコールでありアナログはアリルアルコール構造を有している。リン酸化がうまく進行しなかった理由の一つとして、飽和型よりもアリルアルコールの方が試薬に鋭敏に反応したことが考えられる。この点を考慮して、最終年度は、アナログの飽和化に続くリン酸化を検討する。リン酸化法が確立でき次第、リポソーム膜との相互作用解析へと駒を進める。 (1)アナログの末端アリルアルコール部位の選択的還元による飽和型アナログ合成:イリジウム錯体を用いた1段階でのオレフィン異性化あるいはアルデヒドへ酸化した後、1,4ー還元を行い、飽和型のドリコールアナログを合成する。 (2)モデル化合物を用いた飽和型アルコールのリン酸化:モデル化合物としてC45の長鎖イソプレノイドを用いてリン酸化を試みる。その方法をもとにリン酸化ドリコールアナログを合成する。 (3)リポソーム膜との相互作用解析を実施する。
|
Causes of Carryover |
研究経過において述べたように、本研究の基盤となっている合成がうまく進まなかったことによって、計画していた機能評価研究が立ち遅れた。その間、機能評価研究にかかる試薬の購入などを差し控えたことにより差額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
合成研究にかかる問題点を早急に解決することによって、計画していた研究を推し進める。研究経費はそのための消耗品等の購入に充当する。
|