2017 Fiscal Year Research-status Report
マングローブ林における「利用を通じた資源管理モデル」の構築と社会実装手法の確立
Project/Area Number |
15K12785
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渕上 ゆかり 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特任研究員 (70712834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石丸 香苗 福井県立大学, 地域総合研究センター, 准教授 (00572471)
渕上 佑樹 三重大学, 生物資源学研究科, 助教 (30747895)
上須 道徳 大阪大学, COデザインセンター, 特任准教授(常勤) (50448099)
谷口 真吾 琉球大学, 農学部, 教授 (80444909)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 持続可能な資源利用 / 観光保全 / 地域定着性 / 経済活性 / 取捨選択 / マングローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
【環境負荷評価】 ツーリズム利用は、観光船らの波による物理的作用がマングローブ林動態に影響を及ぼすことが懸念されているため、上流と下流に5m×30mのプロットを設定し植生調査と地形測量を行った。その結果、上流では沿岸から10m地点で密度や地形の変動が大きく、下流では30m地点までなだらかに変動していることが分かった。引き波と潮による影響は水路から6mまでと推測されている(環境庁2000 仲間川マングローブ林被害防止対策検討調査報告書)ことから、潮位の影響を強く受ける下流では引き波の影響が潮の干満と複合的になる可能性を検討し、追加調査・分析を進めていることを明らかにした。 【経済・地域定着性評価】 社会的要因がマングローブ利用に与えた影響を時系列で整理することで、地域における利用手法の取捨選択要因を明らかにした。第二次世界大戦前の西表島では炭鉱開発が盛んに行われており、その結果島外への輸送経路が確立された。炭鉱開発以前は一般家庭での染織利用が主であったが、以後は工業用のタンニンの製造が大規模に行われた。戦後は炭鉱の閉鎖、沖縄返還などの社会的変化、化学製品による代替製品の普及により工業用タンニンの生産は衰退した。一方、国内観光需要に対し、日本最大のマングローブ林という地域特性を生かしツーリズム利用に移行した。つまり、直接利用である非木材林産物利用は、現在の社会状況においては経済面からも環境負荷の面からも持続可能性が低いため衰退し、現在は間接利用である景観利用が観光主体の島内産業に適応し、経済活性および文化・環境保全という役割を担うことで地域に定着しているといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、調査地を沖縄に絞って研究を進めることとしたが。その結果、資料分析や現地での植生調査に時間を十分かけることができたため、非常に良いデータを収集することができた。また、比較対象とする予定のインドネシア事例に関しても、本研究の結果と比較が可能な形での公開の準備が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は上記の西表における利用事例評価を統合するとともに、インドネシアとの比較分析を行うことにより生態環境や社会条件のみならず経済発展の段階の差異やダイナミクスを考慮した「持続可能なマングローブ林利用モデル」の作成を進めている。
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Causes of Carryover |
申請時の計画では、海外での調査経費を計上していたが、計画を変更し行わなかったため。
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Research Products
(2 results)