2015 Fiscal Year Research-status Report
マンガが伝えるメキシコの歴史と文化:情報発信ツール開拓への挑戦
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15K12789
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
嘉幡 茂 京都外国語大学, 京都ラテンアメリカ研究所, 客員研究員 (60585066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 貴徳 関西外国語大学短期大学部, 英米語学科, 講師 (90753666)
福原 弘識 埼玉大学, 教育機構, 非常勤講師 (10725956)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地域支援 / 文化遺産 / 文化人類学 / 地域連携教育 / マンガ文化 / トラランカレカ / 考古学 / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
メキシコにおいて、マンガという手法を用いて古代文化遺産や学術研究成果をより多くの人々に理解してもらい、日本政府の文化貢献活動を広く認知してもらうことが本研究の第一の目的である。研究者自身が情報の発信先を一般市民と設定し、その媒体としてマンガを用いる手法は斬新である。この方法を構築するため、メキシコ合衆国プエブラ州トラランカレカ行政区で文化人類学調査を実施し、媒体の中で取り上げるトピックを決定する。しかし、本研究は、マンガを作成し、多くの人にこれを閲覧してもらうことが最終目標ではない。閲覧前と後で文化遺産や歴史そして日本政府の貢献度に関する意識調査を行い、この媒体の有効性を研究し、より効果的な方法論やコンテンツを開発することが最終目的である。 上記の目的を達成するため、平成27年度では、マンガ作成のため5つのトピックを決定した。①「考古学って何のためにあるの?:古代人の知恵」②「日本人考古学者の野望と探偵ミリアム」③「ラ・ペドレーラには何があるのか?!:新たな歴史を求めて」④「メソアメリカって何?古代人がうみ出したもの」⑤「春分の日の出来事」。その中で一つのトピックを完成させた。文章は日本語とスペイン語を使い、成果発表を両国で行えるようにしている。 一方、マンガの閲覧前の意識調査をトラランカレカ村で行った。約500人からに量的調査を実施した。現在はこのデータ入力と解釈を行っている。これを基に、今後作成していくトピック内容を修正し、閲覧後に行う意識調査を介して、マンガと言うツールの有効性そしてコンテンツの娯楽性と学術的価値を評価していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マンガのコンテンツを面白く、そして教育媒体として利用できる水準を確保するために、マンガの世界観を完成させる作業を行った。その後、【研究実績の概要】で述べた5つのトピックのテーマを決定した。トピック①の内容は以下である。 古代メソアメリカ文明では、生きた人間の心臓を摘出する儀礼が頻繁に繰り返されていた。現代の私たちにとっては野蛮な行為と映る。なぜ、この儀礼を行う必要があったのかを中心テーマに、また日本の研究費で実施されている研究活動であることを暗示させる目的を持ち、一風変わった日本人研究者と村に住む双子の姉妹との出会いを通して、このテーマを理解していくストーリー展開にした。 トピックの作成と同時に、平成27年2月にアンケート調査を実施するため、質問項目を確定した。この意識調査は24項目からなり、大人から子供(小学生4年生以上)の約500人に行った。現在は、このアンケートを回収し終えデジタル化し、解釈を行っている。 さらに、2月25日には、トラランカレカ村で同自治体の協力を得て、子供を対象に、どのようにマンガを作成するのかをテーマにワークショップを開催した。 一方、本研究はトラランカレカのみならず、これを包含するプエブラ州の一般市民からも注目を得ており、研究代表者は平成27年12月1日と平成28年4月12日にRadio BAUP “Asi lo dijo Duchamp”に出演した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度にあたる平成28年度では、残り4つのトピックのマンガ化を急ぎ、閲覧後の意識調査を実施する。マンガの配布は28年12月頃を予定しており、平成29年2月上旬に閲覧後の意識調査を行う予定である。これを介して、マンガとそのコンテンツを学術的に評価する。 一方、研究成果の発表として以下を考えている。メキシコ現地では、購読対象を一般国民としている『Arqueologia Mexicana(メキシコの考古学)』という季刊誌に、研究内容とマンガを寄稿する予定である。すでに編集側から打診があり、5つのマンガが完成しだい、企画書を提出する予定になっている。日本では、6月4日・5日に開催される、日本ラテンアメリカ学会第37回定期大会と、2016年6月25日・26日の日本マンガ学会に参加する。最後に、京都外国語大学・国際文化資料館の紀要で、最終成果をまとめ発表する予定となっている。
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Causes of Carryover |
分担研究者(小林貴徳)の分担金48856円を次年度に使用する理由は、次年度のメキシコでの海外調査期間を長くし、より詳細なアンケート調査と聞き取り調査を実施するためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年8月に実施する調査期間を当初予定していた期間よりも長くし、差額分をこれに充てる。
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