2015 Fiscal Year Research-status Report
方法としての比較思想―知覚論の東西比較をモデルとして
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15K12810
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
護山 真也 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (60467199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三谷 尚澄 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (60549377)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 比較哲学 / 知覚 / 仏教認識論 / 概念主義 / 錯覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
知覚をテーマとして設定して、西洋哲学・インド哲学・認知科学の分野横断的な対話の場を構築することを目指す本研究では、2015年11月14.15の二日間にわたる国際ワークショップを企画・開催し、次のような具体的な成果を挙げることができた。 1. E. Franco (Leipzig University), K. Preisendanz (University of Vienna)をはじめとする海外の研究者を招へいすることで、最新の比較思想研究・インド哲学研究の成果に基づいた議論を構築することできた。また、英語を公用の言語とすることにより、それぞれの分野に特有の難解な訳語に悩まされることなく、共通の概念について実りある討議が可能になった。 2. インド哲学研究の側からは、西洋哲学との対話を意識することで、従来の研究では思想史的な文脈で整理されてきた、知覚の非概念性/概念性をめぐる議論や誤謬知や錯覚をめぐる議論に対して、その哲学的意義を掘り下げる考察が行われた。その結果、インド哲学内部で閉じられてきた議論を、現代の知覚の哲学で論じられる知覚の概念主義/非概念主義をめぐる論争や虚構主義における非存在対象の問題などへ接続可能であることが明らかになった。 3. 一方、西洋哲学の側からは、「見える」などの知覚に関わる動詞の分析から知覚の本性へ迫るアプローチや、知覚経験と時間性の関連についての議論などを通して、インド文法学における知覚動詞の分析や、仏教における刹那滅論との比較研究への展望が開かれてきた。 4. ただし、相互の対話が現代の知覚の哲学とインド哲学の知覚理論との間にある親和性や類似性の指摘に終始したことは反省すべきであろう。二つの伝統の対話を阻害する要因亀裂や差異性に着目することで、それぞれの伝統に特有の固有性を明確にすることが次の課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、知覚の比較哲学に関して前・後期で2回に分けてシンポジウムを行う予定であったが、今年度はそれを1回にまとめ、より拡張した形での国際シンポジウムとして実施することができた。シンポジウム開催にあたり、研究分担者と密接に連携をとりながら、図書購入などの研究環境の整備、また、西洋哲学とインド哲学双方における知覚論の問題点についての討議・検討を進めることができた。また、次年度のシンポジウムや比較思想学会での発表エントリーも進めており、研究成果の公表に向けても、順調に計画が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を受けて、心理学や認知科学などの他分野とも協同する形での、知覚の比較哲学に関する討議の輪を広げるとともに、その成果がそれぞれの分野にフィードバックされるために必要な方策を練っていく予定である。また、最終成果の公表の準備も進めていく。
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Causes of Carryover |
図書の入荷が遅れたため、次年度への繰り越しが必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定していた図書の購入を進めることで、次年度に平成28年度請求額と合わせて適正に使用する。
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Research Products
(7 results)