2015 Fiscal Year Research-status Report
「アジア主義」思想の形成と展開の諸相―岡倉天心の思想と人脈を中心に
Project/Area Number |
15K12820
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Research Institution | The Nakamura Hajime Eastern Institute |
Principal Investigator |
佐々木 一憲 公益財団法人中村元東方研究所, その他部局等, 研究員 (80508515)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 岡倉天心 / アジア主義 / ヴィヴェーカーナンダ / タゴール / フェノロサ / 仏教美術 / アジア近代史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、明治期にその萌芽を見せその後今日まで続く「アジア主義」の思想潮流について、その形成の過程を、岡倉天心の思想ならびに活動の足跡を追いながら再構成してみようという試みである。とりわけ同氏の影響について、発信側の資料からよりもむしろ、受信側の資料をもとに見ていこうと企画している点が、従来の同種の研究と一線を画すところである。そのため、初年度である平成27年度には、二年次以降の調査の中心となるコルカタ(インド)、ボストン(アメリカ合衆国)と天心との繋がりがどのように形成されたのか、という点を明らかにすべく準備的な調査の遂行に注力した。 具体的には、天心が仏教美術=アジアの文化的価値に開眼する契機を与え、後に彼のボストン行きの道筋をつけたアーネスト・フェノロサならびにビゲロウとの関わり、また、コルカタにおいて邂逅し、相互に大きな影響を受けたと考えられるラーマクリシュナ・ミッションのヴィヴェーカーナンダ師ならびにラビンドラナート・タゴールとの関わりについて、文献資料と実地調査により知見を深めた。(岡倉天心全集、ヴィヴェーカーナンダ全集ならびに各種研究書の入手と滋賀・奈良・京都ならびに福岡の実地調査の実行) 以上のごとき現報告者個人において進めることのできる研究を進める一方で、国外調査を行なう際に十分な支援を得られる環境を整えるべく、国外における協力者/団体の確保にも努めた。とりわけ、インド思想の全世界的な普及を目指す団体であるラーマクリシュナ・ミッションはインド国内はもとより、アメリカにおける調査候補地ボストンにも支部を置いていることから、本研究の調査を進める上で大きな支えとなることが期待される。そうした目論見から、同団体の日本支部を訪問し、責任者とコンタクトを取った。また、インド在住のタゴール研究者ともコンタクトをとり、協力を取り付けることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
岡倉天心の思想ならびにその影響力を、その受け手の側の資料をもとに考察することを目的とする本研究では、良質な各種資料(証言等の無形のものも含む)の入手が実りある成果を得る上での生命線となると認識している。その意味で、現在までに入手できた資料や、報告対象年度中に実施した近畿・九州の実地調査により、天心の打ち出したアジア主義という構想の形成過程について大まかな方向性が見えてきたこと、また、当初の計画通り、初年度において今後の調査を進める上で当てにすることのできる協力者を得ることができたことは、研究の進捗度という点において、おおむね満足できる結果であると考えられる。 おおむね、と限定的な表現を用いているのは、協力者は得られたものの、具体的な支援内容そのものについてはまだ確保されていないことを勘案してのものである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に従って、初年度に準備した資料ならびに研究ルートを適切に活用して、二年次・三年次には国外(インド/アメリカ合衆国)に渡っての調査を実施する予定である。 ただし、二年次からは所属機関の変更に伴い、エフォートの度合いを下げざるを得なくなると予想されること。また、海外に渡航する日程の調整が難しくなりそうなことなど、研究環境の変化に伴う困難が出てくることが予想される。その点については、早め早めの計画と実行を心がけるなどして対処してゆくよりないと考えている。
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