2016 Fiscal Year Research-status Report
「アジア主義」思想の形成と展開の諸相―岡倉天心の思想と人脈を中心に
Project/Area Number |
15K12820
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
佐々木 一憲 立正大学, 仏教学部, 特任講師 (80508515)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 岡倉天心 / ラビンドラナート・タゴール / ヴィヴェーカーナンダ / ラーマクリシュナ・ミッション / コルカタ / シャーンティニケータン / アジャンタ・エローラ石窟群 |
Outline of Annual Research Achievements |
H28年度には当初、岡倉天心の第二の活躍の場となったアメリカ・ボストンへの渡航調査を企画していたが、勤務先大学のスケジュールの関係で渡航が難しく、ボストンでの調査はH29年度に回すこととした。その分、インドでの調査に力を入れ、当初は一部文献調査で終わらせるつもりでいたアジャンタ、エローラ石窟の調査の他、ムンバイ、ベナレスなど、天心自身がインド調査時に訪れた地を入念に調査して回った。 昨年に引き続き訪れたラビンドラナート・タゴールゆかりの大学のあるシャーンティニケータンでは、協力を取り付けた研究者(ヴィシュヴァバーラティ大学日本学院の助教授、アリウル・アシム博士)と打ち合わせを行い、緊密に連絡をとりながら研究を進めていくことを再確認した。 また、同じく昨年に引き続き訪問したコルカタでは、今回は本研究において、天心と交流をもったインド人としてキーパーソンとなるヴィヴェーカーナンダおよび彼の周辺の人物について(とりわけ、ジョセフィン・マクラウド婦人など)の調査に力をいれ、ラーマクリシュナ・ミッション文化センターを訪れ資料を収集した。 コルカタではさらに、先述のタゴールの旧居が大学に改装されて存続しているラビンドラ・バーラティ大学も訪れた。同大学にはタゴールの事跡に関する博物館も併設されており、タゴールの日本訪問時の貴重な写真などを観覧し、当時の意外な人物交流図を知ることが出来た。 インド渡航およびその間に彼が経験した人的交流は、その後の天心のアジア観を考える上で一つの大きな契機ともなり、また彼の影響がインド人の国民意識に訴えた側面も強く、丁寧に研究する必要があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属を移し、研究環境が大幅に変わったことが、研究の遅れの主な原因となっている。遅れというのは予定した海外渡航調査の時期を順延したことと、本プロジェクトのテーマでの研究発表ができていないことを指すものであるが、在籍する大学、また学会ではなかなか本テーマでの研究発表は難しそうな見通しであるため、WEBサイトを利用した研究成果の公表など、手法を工夫する必要があることも懸案事項となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度より所属研究機関が、学術研究専業の研究所から大学へと変わったため、以前のように自由にスケジュールを設定して調査を進めることが出来なくなった。とりわけ、海外出張については自由度が大幅に減退し、日程の設定が難しくなっている。 渡航調査の自由度が減退する一方で、文献資料の充実度は段違いに上がっていることから、今後は文献調査の比重を大きくすることも検討する必要を感じている。 ただ、現在のところ、残るはアメリカ・ボストンの調査のみということもあり、ひとまず原案通りに研究を進めていく予定である。 当面は2回のインド渡航で予想を超える資料を収集することができたことから、その読解・研究を急ぐ必要があると考えている
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Causes of Carryover |
アメリカ渡航調査を実施する予定で確保しておいた資金であるが、アメリカ調査を最終年度に順延することとしたため、その分の資金を使わずに残したところである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の使用額と昨年「次年度使用額」として残した分を合算し、アメリカ渡航調査を実施する予定である。
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