2018 Fiscal Year Annual Research Report
Tenshin Okakura and "Pan-Asianism": An interpretation on the ripple effect of the activity of the Japanese outstanding ideologist.
Project/Area Number |
15K12820
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
佐々木 一憲 立正大学, 仏教学部, 特任講師 (80508515)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 岡倉天心 / アジア主義 / ベンガル・ルネッサンス / ボストン美術館 / ヴィヴェーカーナンダ / タゴール / 仏像 / 日本美術院 |
Outline of Annual Research Achievements |
岡倉天心の活動や人脈を辿ることで、アジア主義の風潮が勢いをもった時代、どういった時代背景がその風潮の広がりを後押ししたのか、またその風潮の中で天心その人の活動はどのような影響を世界に与えたのか、を考察する本研究であるが、最終2018年度は前年度までのインドに引き続き、アメリカ・ボストンでの天心の活動に焦点をあてて実地調査、収集資料の分析を進めた。 天心が晩年、ボストン美術館の東洋部長として活躍したのはあまりに有名である。このとき天心の指導のもと同美術館が蒐集した東洋美術のコレクションは、その数の面でも質の面でも今日西洋における東洋美術コレクションの最高峰に位置するものと自他ともに認められている。そのコレクションの中でも、報告者がとりわけ注目すべきと考えるのは、中国に関するものである。これが単なる珍品や佳作の寄せ集めにならず、歴史的、学術的価値の高いコレクションとなっているのは、最初の方向付けを行った初代東洋部長の天心に、「インド・中国というアジアの二大文明の流れは日本に終帰する」という確固たる大局的な文明史観があったからである。中国最古の仏教寺院・白馬寺由来の仏像入手のために手を尽くしたエピソードは、審美眼のみならず文明史的視野を持って蒐集にあたった天心の本領をよく伝えている。 ボストンでの彼は、美術館での活動に留まらず、ガードナー婦人の相談役となったり、ハーヴァード大学の学士たちと日常的に交流を持つなど、持ち前の語学力と社交性でボストンの名だたる名士たちのただ中で精力的に活動し、日本や東洋の文化の普遍的価値に西洋人の目を開かせる伝道師の役割を果たし続けた。 天心亡き後もボストン美術館は歴史的価値の高い良質の美術品を自然と引き寄せる引力を留めているが、これは東洋美術の真価を理解する人士が育つ環境の礎を天心が残していったからでもある。その功績は正当に評価されるべきであろう。
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