2016 Fiscal Year Research-status Report
なぜドイツ人俘虜は第九を初演できたのか?ドイツ租借時代の青島の音楽活動について
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15K12821
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
志村 恵 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (50206223)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 青島 / 音楽活動 / 第九初演 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ドイツ人の文化的特性に帰せられがちな第一次世界大戦後の日本国内のドイツ人俘虜収容所における音楽活動を脱神話化し、収容所内での高度な音楽活動を可能にした前提条件であるドイツ租借地時代の青島の文化活動の実際を明らかにするものである。この目的のため、俘虜たちが渡日前に居住していたドイツ租借時代の中国・青島における文化活動、特に音楽活動を当時の史料(官報、新聞等)をもとにまとめるとともに、その背景にあった租借地におけるドイツ帝国政府及び海軍・総督府の文化政策と文化交流の実態について、当時の史料(海軍・総督府関係資料:ドイツ公文書館軍事部門所蔵等)に基づき検討しようとするものである。 2016年度においては、金沢大学所蔵の『青島新報』(Tsingtauer Neueste Nachrichten)(1913年-14年)と京都大学に所蔵されている『徳華彙報』(Deutsch-Asiatische Warte,1898-1904)、『山東彙報』(Kiautschou-Post、1908-1912)及び『徳文新報』(Der Ostasiatische Lloyd)(1898-1914)の記事をを調査し、掲載されていた様々な音楽界の予告や批評記事をワード文書に入力した上で、演奏会一覧を作成し、演奏者、会場、演奏プログラム等を分析した。次に、ドイツ・フライブルクにあるドイツ公文書館軍事部門に所蔵されている青島総督府関連文書の調査・資料調査を行い、ドイツ租借地時代の軍楽隊関係の文書を収集・分析した。 これらの調査分析の結果を、「ドイツ租借時代の青島における音楽活動について」 『ドイツ語文化圏研究』(日本独文学会北陸支部)13(2016年12月)25-40.として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ドイツ・フライブルクにあるドイツ公文書館軍事部門における調査・資料集において、当初想定していた以上の史料が見つかり、その読み取りと分析に時間を要したため、また、ドイツ租借地時代の青島における音楽活動が当初予想呈していた以上の規模のものであることが分かり、音楽活動の実態についての分析が遅れている。これにより、最終報告書の準備が2017年度に伸びることとなった(補助事業期間の延長承認済)。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツ租借地時代の青島における音楽活動を作成した音楽会一覧に基づき、日時、演奏者、演奏会場、演目、批評記事等についてまとめ、ドイツ・フライブルクにあるドイツ公文書館軍事部門に所蔵されていたドイツ総督府関係の史料の分析と併せて、最終報告書をまとめ、公表する。また、その概略をドイツ語でホームページに掲載する。
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Causes of Carryover |
ドイツ・フライブルクにあるドイツ公文書館軍事部門における調査・資料集において、当初想定していた以上の史料が見つかり、その読み取りと分析に時間を要したため、また、ドイツ租借地時代の青島における音楽活動が当初予想呈していた以上の規模のものであることが分かり、音楽活動の実態についての分析が遅れている。これにより、最終報告書の準備が2017年度に伸びることとなった(補助事業期間の延長承認済)。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終報告書ができ次第、印刷に付し、次年度使用額を全額印刷費に充当させる。
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