2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K12826
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
加藤 公太 順天堂大学, 医学部, 助手 (80734615)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 美術解剖学 / 美術史 / 医史学 / 解剖学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は19世紀~20世紀初頭にヨーロッパで出版された美術解剖学書の調査を重点的に行い、学会等で中間発表を行った。研究の進捗状況としては、19世紀に出版された美術解剖学書149冊のリスト化が完了し、美術解剖書から時代の流れがほぼ把握できるようになった。今後19世紀の美術解剖学書の歴史について論文にまとめる予定である。 本研究の協力に関しては、平成27年11月21日から12月2にかけて東京藝術大学絵画棟大石膏室にて開催された「東京藝術大学特別展示 はじまりは久米桂一郎から メディカル アート&イラストレーションの歴史と現在」展の「日本の美術解剖学の前史」ブースにおいて、本研究の調査資料となっている美術解剖学書である『闘士の解剖図』(1812)を展示、協力した。本展示の会期中の来場者数は2000人を上回った。 学会発表では平成28年1月9日に開催された日本美術解剖学会において、「中間報告:19世紀ヨーロッパの美術解剖学の歴史」を発表した。 文献調査の途中経過は、研究報告ブログ「Reseach of Artistic Anatomy (http://kotakato.blogspot.jp/)」にて掲載している。本ブログ開設の平成27年4月1日から28年4月13日までの閲覧数は5984件に上り、日本語記事ではあるものの欧米諸国などからの閲覧者が多い。 今後は、平成28年5月には医史学会総会において「19世紀西洋の美術解剖学の歴史」の発表を行う予定である。さらに平成29年3月には日本解剖学会総会において発表を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたよりも多くの一次文献に当たることができた。それによって日本の美術解剖学の前史である、19世紀の美術解剖学書はほぼ網羅的に調査することができた。19世紀の美術解剖書は149冊と、当初予定していた資料数よりも多く調査することができたため、より詳細な歴史の流れや、美術解剖学に関わった講師や美術家が把握できた。19世紀において主要な流れを作っていたのは、イタリア、フランス、ドイツ、イギリスで、フランスでは、サルベージ、ガーディ、ファウ、デュヴァル、リシェ。イタリアでは、デル・メディコ、サヴァティーニ、ベルティナッティ、スカンクリーロ。ドイツではゼイラー、ルカエ、フロリープ、コールマン、シーダーといった流れが見られた。イギリスでは解剖学者がフランスの書籍を翻訳して美術の授業に使用していた。 得られた情報量のボリュームから19世紀と20世紀の歴史を分けて調査し、より詳細な調査結果をまとめていくことにした。 20世紀の書籍に関しても歴史の流れを変えた主要書籍は全て調査し、大まかな歴史のアウトラインは把握できた。現在の調査で判明している主要国は、フランス、ドイツ、アメリカ、イタリアで、美術解剖学の系譜は、フランスのリシェ、アメリカのブリッジマンとヘイル、ドイツのタンクとバメス、イタリアのロッリらに移っていった。そして美術解剖学書の教育内容が「絵画や彫刻のため」から「素描のため」と変化していったことも大きな点である。
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Strategy for Future Research Activity |
予想を上回る資料数と情報量のボリュームから19世紀と20世紀の歴史を分けて調査し、より詳細な調査結果をまとめていくことにした。まず、調査がほぼ完成している19世紀の調査結果を28年度中に論文としてまとめる。投稿先は『日本医史学雑誌』を検討している。同学会は平成28年度5月に開催される日本医史学会総会・学術大会において本研究の発表を予定している。 つぎに19世紀の調査に関しては積極的に学会発表等を行い、日本の美術解剖学の前史がどのようなものであったかを広く周知させていこうと考えている。日本の美術解剖学の前史である19世紀西洋の美術解剖学は美術解剖史上、最も華々しい時代で、人体の内部構造に関する描写も現在よりもはるかに極まっている。こうしたことは美術解剖学を学ぶ学生らにとっても有益な情報である。 さらに20世紀の美術解剖書の書籍調査を行う。大まかな流れはすでに把握できているが、さらに調査を進め、細かな隙間を埋める作業を行い、詳細な歴史を完成させていく。この内容についても、平成28年度中に学会発表を行い、最終的に論文にすることを検討している。20世紀の歴史に関する学会発表は平成29年1月に開催予定の「日本美術解剖学会」を予定している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由に関しては、文献購入用に充当した前倒し請求の通知があるものと思い、研究推進センターからの連絡を待ったため、把握が遅れたことが主たる要因である。このことから、海外からの郵送期間を含めて年度内に検収が難しいと考えた一次文献の一部について購入を次年度に見送った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度の調査で見送った一次文献の取得と調査に充当する。
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Remarks |
美術解剖学書など美術解剖学に関連する資料の調査と紹介を行っている。
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