2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K12826
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
加藤 公太 順天堂大学, 医学部, 助手 (80734615)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 美術解剖学 / メディカル・イラストレーション / 美術解剖学史 / 解剖学 / 美術教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
19~20世紀に出版された美術解剖学書を中心に、美術解剖学史についての調査(渡航調査を含む)、研究、発表を行った。19世紀に関する調査が終了し、論文および資料としてまとめた。この論文は、日本医史學雑誌(第63巻第1号、2017.3)に掲載された。 論文及び資料は、以下の通り。原著論文『19世紀における西洋美術解剖学の歴史-日本の美術解剖学の前史として-』(加藤公太、坂井建雄)、資料『19世紀西洋における美術解剖学書年表』(加藤公太、坂井建雄)。本論は、日本の美術解剖学の歴史研究として最も規模の大きな調査に基づく基礎研究である。 19世紀西洋の美術解剖学教育は、日本が輸入した美術解剖学であり、現代においても使用され続けている。この時代区分の調査資料は、これからの美術解剖学教育がどうあるべきかについて重要な示唆に富む。 学会での発表は、以下の通り。第117回日本医師学会総会・学術大会(2016.5, 於広島県医師会館、広島)、日本美術解剖学会・2017年大会(2017.1, 於東京芸術大学、東京)、第112回日本解剖学会総会・全国学術集会(2017.3, 於長崎大学坂本キャンパス、)。 渡航調査は、2016年10月に布施英利東京芸術大学准教授と行い、フランスにおいてパリ・ルーブル美術館とモンペリエ大学解剖学博物館を中心に、19世紀の美術解剖学の起点となり、明治時代に日本にも輸入されているジャン・ガルベール・サルヴァージュの解剖模型などを撮影・記録した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
19世紀の美術解剖学教育について調査が完了した。20世紀以降に関しても5割程度の調査が進行し、大まかな時代の推移について把握することができている。19世紀の美術解剖学書は、文献に記載されているものを含め154冊確認できた。これは、美術解剖学の歴史家ボリス・レールによる先行研究の調査内容から5冊程度更新することができた計算になる。アメリカ、ロシア、中国、韓国の調査がまだ不十分と考えられる。 歴史の編纂に関しては、美術解剖学書および筋肉模型などの資料を集めて比較し、著者情報をまとめることで推移を可視化できることがわかった。この調査方法は、19世紀の歴史に限らず、それ以前の時代の調査においても有効な手段である。 図版に伴って記述された解剖学的情報は、まばらであることと、美術解剖学の教科書自体が詳細な解剖学的情報を含まなないため、比較することが難しいことがわかった。しかしながら、美術解剖学書に対する熱の入れようについては著者によって差が見られ、良質な書籍は選別することが可能であった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き20世紀に出版された美術解剖学書の調査を進める。 20世紀欧米の美術解剖学は日本の美術解剖学教育と別の道を歩んでいる。例えば世界的な美術解剖学書のスタンダードとなっているドイツの解剖学者ゴットフリード・バメスの美術解剖学書ないしそれに影響を受けた美術解剖学書は日本語に翻訳されていない。研究者ないし教員が知っているのみである。バメスの教育内容は、19世紀末のリシェに始まり、ドイツ国内での研鑽を経て生まれた。そうした流れを紐解くことで、今日の世界的なスタンダードな教育と日本の美術解剖学を結びつける研究を発表し、最終的に論文としてまとめていく。 発表は第118回日本医史学会総会・学術大会(2017.6、京都)、日本美術解剖学会2018年大会(2018.1、東京)を予定している。
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