2016 Fiscal Year Research-status Report
3Dデータを用いた錯視効果による装飾彫刻の表現手法の研究
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15K12832
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
杉浦 誠 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 講師 (40625589)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 泰 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80210376)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 装飾彫刻 / 錯視 / 文化財 / 3D |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27度に愛知県内々神社の蟇股(龍)を3D計測し、彫刻面に対し水平の高さ、参拝者の視点による見た目の違いについて考察を行なったが、平成28年度では愛知県稲橋八幡神社本殿の海老虹梁(龍)といった同じく立川流の装飾彫刻において熟覧調査、写真撮影を行ない、その共通点を見出した。また稲橋八幡神社のものは下図が残されており、下絵と彫刻との関係性において昨年度考察した推論を裏付ける結果となった。 稲橋八幡神社も内々神社の龍と同様に、通常写実的には1列となる背鰭を2列で彫り出している。もし背鰭が1列ならば、拝観者の視点で見上げた時、表裏のいずれかにおいて背鰭が胴体の陰となり視認しづらくなるため、表側用、裏側用の2列を彫刻することで両側からも背鰭がみえるように工夫したと考えられる。龍の装飾彫刻において一般的に行われていることなのか、流派、地域や時代性なのかは現時点では言及することはできないが、今後も他作例を調査していく必要がある。 また社寺彫刻にみられる装飾彫刻において離れた位置から見やすくするために、彫り込みの深さや彫り込む角度等によって、意図的に影の幅や濃淡を変化させていたことが考えられる。実際に手板に以下6種類の溝を彫り異なる視点から検証することで、装飾彫刻の彫り込み方とその形から作り出される陰影との関係性を考察した。 A 正面より奥に垂直20mmのV字の溝 B 同深さで3mm食い込ませた溝 C 同深さで7mm食い込ませた溝 D 同深さで7mm凹状の弓なりに食い込ませた溝 E 正面より奥に垂直30mmの断面を四分円状にした溝 F 同深さで10mm凹状の弓なりに食い込ませた溝 水平から見たとき影全体の幅は深さが同じであればほぼ一緒になるが、下から見上げた時食い込ませた距離が大きいものほど、より濃い影の部分ができる。DとFは他の溝に比べ広い諧調の影を作り出すことができることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたヒアリング等で平成29年度に変更になった点はあるが、錯視の検証では昨年度の推論を確証に向けて大きく飛躍させた点もあり、トータルとしてはおおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
・井波の木彫職人へのヒアリング ・装飾彫刻の模刻 ・歪ませ方の原理を検証し、3Dプリンターで造形 ・評価・総括
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Causes of Carryover |
富山県井波の彫刻職人へのヒアリングなど先方の予定が変わり、訪問時期が変更になったりして、その分の予算が余る結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
先方の都合がつき次第、今年度の早い段階で見学ヒアリングを行なう予定である。予定は若干ずれ込むことになるが、予算の額や用途は特に変更は必要ない。
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