2017 Fiscal Year Research-status Report
3Dデータを用いた錯視効果による装飾彫刻の表現手法の研究
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15K12832
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
杉浦 誠 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 講師 (40625589)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 泰 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80210376)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 装飾彫刻 / 錯視 / 文化財 / 3D / 伝統工芸 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は実際に富山県南砺市井波町の井波彫刻組合で、伝統工芸として装飾彫刻の制作にあたっている職人の方々へのヒアリング調査及び愛知県春日井市内々神社の装飾彫刻の調査を中心に行った。 井波彫刻組合におけるヒアリングでは苦心した点や気付いた点、使用している道具などについて伺い、積極的な意見交換を行った。当時井波彫刻組合では、大型の装飾彫刻の復元制作を数枚の古写真を頼りに復元図を制作し、それを下絵とすることで彫刻作業を行っていた。その復元にあたっては写真における形の見え方の違いで施主と職人との間で折り合いをつけるのに時間を要したようである。その違いの認識については、本研究の主要なテーマの錯視とは直接関連性はないが、装飾彫刻の復元制作における3Dデータの必要性についてのひとつの問題提起となった。 内々神社における調査では、以前調査した蟇股「龍」の補足調査に加え、同じ作者(立川富昌)である山車の御舞台懸魚「弄玉」の3D計測を行った。その3Dデータを解析した結果、「龍」と同様に拝観者の視点に合うように傾けて制作するなど、随所に「龍」と同様の錯視効果を含んでいることが確認された。また「弄玉」は、制作の際に使用したとされる下絵が存在するため、下絵と実際に彫られた装飾彫刻との相違点を比較検討するにあたって良例となりうる。 その他にも井波彫刻総合会館にて欄間彫刻における奥行表現を、錯視効果の工夫といった点から考察した。また南砺市城端曳山会館で曳山の熟覧調査も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去3年度間に数件の装飾彫刻の調査を行い、数々の知見を得ることで当初予定していた研究成果を出すことができたが、その中で特に内々神社・蟇股「龍」では本研究の核となる錯視効果の典型的な要素が詰め込まれている可能性が確認された。そこで本研究を1年延長し、特に内々神社・蟇股について一層深い考察を行うことで、その整合性を検証し、より意義深い研究成果を出すことができるのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に行った内々神社・御舞台懸魚「弄玉」と現存している下絵との比較を行い、下絵の描き方から下絵の持つ役割について考察を行う。さらに蟇股「龍」について、これまで本研究で認められた錯視効果を踏まえた上で、現存しない下絵の復元制作を3Dデータを活用して行う。また蟇股「龍」の頭部についてその錯視を生み出す歪ませ方について着目し、3Dデータを用いて解析することで、歪み等を修正した3Dデータをコンピュータ上で制作して、オリジナルとの相関関係について考察を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 研究を1年延長することで、内々神社を研究対象の中心にするといった研究計画の変更を行ったため、予算が余る結果となった。 (使用計画) 本来予定してなかったが、研究のより分かりやすい成果となる下絵、内々神社・蟇股「龍」の頭部の制作を行う予定である。
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