2015 Fiscal Year Research-status Report
カルチュラル・アサイラム―中国インディペンデント・ドキュメンタリーの生成と流通―
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15K12846
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
鳥井 珠子 (秋山珠子) 立教大学, ランゲージセンター, 教育講師 (80422385)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中国 / ドキュメンタリー / インディペンデント映画 / アサイラム / 映画祭 / 字幕翻訳 / 映像 / 地域研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年に誕生25周年を迎えた中国インディペンデント・ドキュメンタリーのアサイラムとしての機制と実験の諸相を明らかにすべく、今年度は北京調査を行い、栗憲庭電影基金と同基金主催の北京独立映像展、呉文光の新拠点・秦家屯、CIFAにおいて関係者および現地在住監督のインタビュー、資料と作品収集を行った。国内では、東京国際映画祭、東京フィルメックス、恵比寿映像祭、文革50周年記念研究会等において来日関係者のインタビュー調査を行ったほか、山形国際ドキュメンタリー映画祭、中国インディペンデント映画祭、大阪アジアン映画祭、グリーンイメージ国際環境映像祭においては調査に加え、質疑応答の進行・通訳を務め、関連主題討議の場の創出に努めた。さらに、日本在住の中国およびアメリカ人監督のインタビューを行い、本課題のグローバルな諸相を検討した。 また、明治学院大学開催のシンポジウム「中国独立映画のプラットホーム:俳優王宏偉の多様な貌」を組織し、俳優兼栗憲庭電影基金アートディレクター・王宏偉氏を招き、中国インディペンデント映画の歴史と現状を議論し、あわせて本課題の発表を行った。また前述の映画祭等で来日した監督、映画祭組織者、研究者らを招いた連続研究会を開催したほか、早稲田大学現代中国インディペンデント映画研究部会、国際交流基金アジア映画研究会に参加し、本課題および比較対照地域に関する情報収集と広範な討議を行った。神奈川大学エクステンションセンターでは本課題の研究成果を講演の形で披露した。 さらに、本課題と密接に関連する、中国インディペンデント・ドキュメンタリーの字幕翻訳についての発表をAAS(シアトル)、立教大学異文化コミュニケーション学部、同大学アジア地域研究所、日本映像翻訳アカデミーで行った。また、山形国際ドキュメンタリー映画祭出品作『青年★趙』を字幕翻訳し、立教大学でも公開上映会と討論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた雲南への調査を延期したものの、北京における調査や、国内映画祭への参加などを通し、中国インディペンデント・ドキュメンタリーのインタビューと資料収集をほぼ順調に進めることができた。 また、前項で述べた通り、研究協力者である監督および映画祭組織者の来日機会をとらえて、インタビューを進め、研究会を連続開催したことにより、予期した以上の調査結果を得られたほか、研究会に参加した他領域の研究者との討論を通し、本研究課題の持つ多様な側面を検討することができた。 また、明治学院大学でのシンポジウム「中国独立映画のプラットホーム:俳優王宏偉の多様な貌」、AAS(Association for Asian Studies、シアトル)、立教大学および神奈川大学エクステンションセンターにおいての発表・講演などで、本研究課題の途中成果を報告する機会が与えられた。それらの報告の準備作業や、報告後の関連研究者との意見交換などにおいて、本研究が進めてきた作業をより明確に理論的に捉えなおすことができた。 本年度は本研究課題の初年度にあたり、当初はアサイラムの基盤となる中国の非公的映画祭をめぐる基礎情報の把握を目標としていたが、上記のような討論や発表の機会を得たことで、アサイラム内部における行動規範や実験の諸相を多くの事例を通して検討することができ、当初の予定以上に研究を進展させられた面も多く、総じて、雲南の調査延期を十二分に補う成果が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度予定し、延期された雲南調査に加え、北京以外の諸都市、および海外における中国インディペンデント・ドキュメンタリーの調査研究を進め、アサイラムの内/外と境界線について調査を重点的に行っていく。また、本年度に引き続き、監督および関係者来日の機会をとらえて調査を行い、効果的な情報収集に努めていきたい。 それとともに、今年度の成果から得られたアサイラムの分析枠組みを再検討し、理論的に精緻化させる作業を進めていきたい。 さらに、台湾紀録片影展、現代中国学会関西大会(京都)をはじめ学会、国際映画祭等において研究課題の途中成果を発表し、また中国人監督や関係者を招いた研究会等を開催することを通し、本研究課題への適切なフィードバックを得、本課題についての理解と関心が高まる機会を創出していきたい。
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Causes of Carryover |
当初予定していた雲南における調査が延期されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度行えなかった雲南での調査を行い、中国インディペンデント・ドキュメンタリーの主要映画祭の一つであったYUNFESTに関するインタビューと資料収集を行う。また、アサイラムの境界線の諸相の把握を主眼に置き、中国国内外在住の関係者についての調査、作品・資料収集、分析を進める。さらに、監督・関係者を招聘し、またはそれらの人々の来日機会をとらえて、随時研究会や上映会を開催し、課題についての情報収集と諸専門家との意見交換を進めていく。
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