2015 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける文化フロー―文化産業と文化政策の視点から
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15K12847
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
河島 伸子 同志社大学, 経済学部, 教授 (20319461)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 文化フロー / 芸術産業 / 芸術政策 / 文化政策 / 文化産業 / ポピュラー文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東アジアにおいてトランスナショナルに文化・芸術が流通している現象につき、それを推進(または抑制)する経済的背景、文化政策的要因を分析することを通じ、文化の質的変容と社会における相互理解の進展を検討するものである。従来の人文学研究では、文化の内容そのもの、あるいはその「受容、消費」を中心とし、その背景にある芸術・文化産業の経済的・産業的特徴、企業の経営・マーケティング戦略、文化政策への考察は不足している。文化フローを生み出す「生産」「流通」に対して社会科学的アプローチを加えて分析することは、文化フローの本格的理解に不可欠である。本研究は、文化政策、文化産業、グローバル文化を専門とする国際的研究チームにより文化フローの形成要因を明らかにし、文化と社会の変容に迫るものである。 平成27年度は、9月にロンドン大学で研究会と公開セミナーを開催した。文化産業における「アジア・モデル」の特徴は何であるのかを検討することを目的としたが、研究チームおよびそれ以外の発表者たちは、より広い視点からアジアにおける文化フローを議論した。例えば中国の文化政策が韓流文化の生成と流通に対してどのように影響しているのか、あるいは、韓国の映画プロデューサーたちが中国に会社を設立し、中国市場に進出してリアリティテレビ番組の制作・販売を行っていることなどが紹介された。 今回は、この研究内容に関心を持つ若手研究者たちをリクルートすることも目的の一つであったが、それ以上によりベテランのイギリスやイスラエルの研究者とも交流できたことは大きな収穫であり、次年度への発展が期待できる結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年9月にロンドンで開催した国際会議では、各自が独自に進めている調査研究結果の報告があったが、中には完成度が高く、論文としてジャーナル等に提出できる状況のものもあった。また、当初の予想以上に多くの報告者と参加者を集めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
文化政策が文化フローにどのような影響を与えているかを分析していく。例えば日本のクール・ジャパン戦略、あるいは経済産業省の施策、文化庁の2020年東京オリンピック・パラリンピック大会に向けた様々な施策が、日本とアジア諸国の間でどのような文化フローに結びつくか、注視すべきテーマである。他に、韓国や中国、シンガポール、タイやマレーシアの文化政策の発展とそれが文化フローに及ぼす影響を分析する。
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Causes of Carryover |
27年度末に京都で国際会議を開催するつもりであったが、海外研究者の予定が合わなかったため、開催を延期したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度にソウルで開かれるICCPRという国際文化政策学会の会議においてセッションをもうける。これに関連しての支出が見込まれる。
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Research Products
(4 results)