2017 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける文化フロー―文化産業と文化政策の視点から
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15K12847
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
河島 伸子 同志社大学, 経済学部, 教授 (20319461)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 文化フロー / アジア / 文化政策 / 文化産業 / クリエイティブ産業 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東アジアにおいてトランスナショナルに文化・芸術が流通している現象につき、それを推進(または抑制)する経済的背景、文化政策的要因を分析することを通じ、文化の質的変容と社会における相互理解の進展を検討することを目的としてきている。本研究は、文化政策、文化産業、グローバル文化を専門とする国際的研究チームにより文化フローの形成要因を明らかにし、文化と社会の変容に迫るものである。 平成29年度は、国際的研究チームのメンバーそれぞれが研究調査を完了させ、国際的出版社Springerより本として刊行することにした。原稿は、チームメンバー以外からも併せて募り、概ねそろったところである。トランスナショナルな文化フローがアジアで起きてきた要因として、本研究では特に文化政策に注目したことに特徴がある。例えば研究代表者が執筆している映画政策関係では、日本の文化政策が映画に関して極めて消極的であることから、民間企業部門での資金調達手段として「製作委員会方式」が発達しているが、これは関与する企業にとっては海外進出のインセンティブをもたらすものではない。したがって、あまり日本映画のアジアへのフローが促されることにはならない。また、シンガポールや中国のように政府による情報コントロールが強い国においては、特に現政治体制にマイナスの影響を与えるような文化フローは制限がかけられているが、近年の情報コミュニケーション技術の発展により、ここには限界があることも示されている。 以上のように、概ね順調に研究は進行したが、平成29年9月にシンガポール出身でロンドンで活動していた海外の研究者の一人が急死するという予期せぬ悲しい事態が発生した。この人には本の編集にも関わってもらっていたため、まとめ作業に少々遅れが生じたが、研究代表者と他の研究者との連携で進めることができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね研究結果の分析は完了している。これを2018年8月後半にエストニアで開かれる国際文化政策研究大会の場で、海外の研究者とともにラウンドテーブルとして発表し、最終的な成果物にまとめていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果は他国の研究者とともに、エストニアのタリンで開催される国際文化政策研究大会にて発表し、参加者と議論を交わす予定である。それを踏まえ、必要に応じて執筆原稿に修正を加え、書籍刊行に向けて進めていく。
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Causes of Carryover |
研究をともに行ってきた海外の研究者の一人が2017年9月に急死するという予期せぬ出来事があったため、海外渡航費を使う計画に一部変更があった。2018年8月にエストニアで国際文化政策研究大会が開催されるため、そこで研究成果を発表し、成果物として計画中の書籍内容に反映させることとした。
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