2015 Fiscal Year Research-status Report
現代日本におけるメディア横断型コンテンツに関する発信および受容についての研究
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15K12848
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Research Institution | Tokai Gakuen University |
Principal Investigator |
大橋 崇行 東海学園大学, 人文学部, 講師 (00708597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 智省 滋賀文教短期大学, その他部局等, 講師 (10742851)
大島 丈志 文教大学, 教育学部, 准教授 (90383215)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メディア / ライトノベル / マンガ / アニメーション / コンテンツ文化 / 児童文化 / 読書指導 / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は研究計画のとおり、本研究の研究対象である「メディア横断型コンテンツ」に関する問題のうち、特に活字メディアと図像・映像メディアとの関係性の問題、および、ライトノベルを中心とした日本のメディア文化のアジア圏における受容の問題を扱った。 まず、活字メディアと映像メディアとの関係性については、平成27年度日本近代文学会春期大会(平成27年5月31日(日)、於 東京大学駒場キャンパス)において、シンポジウム形式のパネル発表「少女たちの〈いま〉を問う ―一九八〇年代の少女小説とジェンダー」を行っている。この内容については、研究代表者の大橋崇行と分担研究者の山中智省の共編著『ライトノベル・フロントライン1』(青弓社、2015年10月)に収めており、今後も本研究の成果はこの媒体で公開していく予定である。 また、海外における日本のメディア横断型コンテンツコンテンツの受容の問題については、タイ、をはじめとした東南アジア圏、およびアメリカ、フランス、中国おける翻訳と受容の問題を扱っている。分担研究者の山中智省と研究協力者の太田睦に収集を依頼し、前掲の『ライトノベル・フロントライン1』に文章の形で発表したほか、山中智省の論文「タイに広がる日本のコンテンツ文化-ライトノベルの翻訳出版をめぐって」(『滋賀文教短期大学紀要』第18集、pp.49-59、2016年3月)にまとめた。 これらに加え、平成28年度に実施を計画している課題「多メディア化する児童文化」の準備も進めている。具体的には、中学生、高校生の読書状況と、そこでの「メディア横断型コンテンツ」の位置についての調査を行い、研究代表者の大橋崇行が論文「中学生・高校生による読書の現状とその問題点 ―ライトノベルの位置と国語教育、読書指導」(『東海学園大学研究紀要 人文科学研究編』第21号、pp.9-21、2016年3月)にまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に予定していたライトノベル雑誌、少年雑誌、少女雑誌についての調査・収集は、本研究開始以前の準備段階から開始したため、非常に順調に進んでいる。これまで国立国会図書館でも端本でしか所蔵がなかったライトノベル関係雑誌の収集をほぼ完了したことは、重要な成果だといえる。 また、研究を進めていく上で、もともと研究代表者の大橋崇行と、研究分担者の山中智省が中心となって開催していた研究会「ライトノベル研究会」を、そのまま本研究の研究会と打ち合わせとを兼ねる形に再編成しているため、研究立ち上げについての調整がスムーズに行うことができた。その結果、海外における日本のコンテンツ文化の受容についての研究も想定していた以上に実施することができている。 このほか、本研究の研究成果の発表媒体として、大橋崇行・山中智省編『ライトノベル・フロントライン』(青弓社)があり、これは平成27年10月から、半年に1回刊行することになっている。これにシンポジウム形式のパネル発表、紀要等における論文の発表も行っているため、研究成果をいち早く公にすることができている。研究代表者の大橋崇行による論文が平成27年度内に2点、研究分担者の山中智省による論文が2点あるだけでなく、平成28年5月にも大橋が1点、山中が1点、研究協力者の太田睦が1点と、より迅速に研究成果を公開している。 そのため、本研究では計画を前倒しし、平成28年度実施計画に想定していた「多メディア化する児童文化」の項目にも、すでに入っているというのが現状である。これは、本研究において研究対象の中心となる中高生を対象にしたライトノベル、マンガ、アニメーションと、児童期にある子どもたちの接している文化との断続について分析、考察を進めるものであり、児童向け書籍の収集のほか、その項目に関連する論文を、研究代表者の大橋がすでに1本執筆、公開することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度においては研究実施計画のとおり、「多メディア化する児童文化」「海外における日本のライトノベル、マンガ、アニメーションの翻訳と受容について」の2つの問題について取り組む予定である。 まず「多メディア化する児童文化」については、研究分担者の大島丈志を中心に行う。特に小学生向けのエンタテインメント小説である「児童文庫」は、ライトノベルとの接続がしばしば指摘されながらも、具体的な内実はあきらかになっていない。この問題については、平成29年3月に日本近代文学会東海支部でシンポジウムを開催し、研究発表、討議を行う。 また、海外におけるコンテンツ文化の受容の問題については、ヨーロッパ地域における日本のコンテンツ受容については先行研究の蓄積もあることから、特にアジア圏に焦点化するかたちにシフトしていきたい。平成27年度の研究で、タイやマレーシアで、日本のマンガ、アニメ、ライトノベルを参考にしたコンテンツを、現地の作家が制作するかたちで展開していることが明らかになっており、これらについては日本側からの研究がまったく行われていないことがわかった。このことから、本研究の申請時にはまだ明らかになっていなかった最先端の〈メディア横断型コンテンツ〉について調査、収集をすすめ、その状況を明らかにするとともに、日本のコンテンツとの断続や、そこでの表現の内実についても分析、考察を進めていく予定である。また、以上のような研究を進めるため、平成28年度には当初の研究計画ではヨーロッパ圏での現地調査を想定居ていたものの、これをアジア圏の調査に変更するかたちで進めることとする。 また、本研究プロジェクトの最終達成目標であり、平成29年度に実施予定としている〈メディア横断型コンテンツ〉の新しい研究方法の確立についても、平成28年度の秋頃には研究代表者、研究分担者で連携をとり、前倒しで進めていきたい。
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Causes of Carryover |
平成28年度に海外でのコンテンツ文化の受容に関する調査、およびシンポジウムの開催を予定しているものの、当該年度予算ではギリギリになってしまうため、平成27年度は支出をできる限り節約して使用して次年度にしようできるように調整を行ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年8月に、海外での調査を予定している。当初の研究計画ではヨーロッパ圏での調査を予定していたが、平成27年度の研究で、タイ、マレーシアをはじめ特に東南アジア地域で、これまで明らかになっていなかった日本のコンテンツ文化の受容が行われていることがわかった。そのため、研究代表者と研究分担者の3名で、アジア圏を中心に資料の調査・収集に出向くことを予定してる。 また、平成29年2月か3月に、日本近代文学会東海支部の研究会で、本研究についてのシンポジウムを開催する予定である。会場は、東海学園大学となる。研究代表者、研究分担者が司会、登壇者となるほか、外部から識者を招いて討議を行う予定であるため、その際の旅費、および謝金としての支出を予定している。
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