2016 Fiscal Year Research-status Report
日中戦争の記憶と表象に関する総合的研究――1940-1960年代を中心に
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15K12852
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
五味渕 典嗣 大妻女子大学, 文学部, 准教授 (10433707)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日中戦争 / 戦争記憶 / プロパガンダ / 検閲 / 占領期 / 李香蘭 / 東アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
2016(平成28)年度は研究の展開期と位置づけ、おおよそ以下の活動を行った。 (1)研究成果の中間まとめと成果の公表。前年度同様、研究分担者として参加している科研費プロジェクトとの協働や、問題関心を共有する他の研究者との連携を進め、アジア・太平洋戦争期からベトナム戦争期までの日本語の戦争文学テクストや戦争映画、従軍記・戦争体験記の調査と分析を進めた。12月には、大妻女子大学草稿・テキスト研究所が主催したシンポジウム「戦争・アジア・検閲――1940年代の文化と政治」で研究報告を行った。 (2)関連資料の集積と研究対象の絞り込み①。戦時・戦後を貫く中国表象のアイコンとして「李香蘭」のイメージに着目、とくに満洲映画協会時代の活動に焦点を当てながら、「李香蘭」映画におけるジェンダー表象の文化政治について検討した。また、戦後における「李香蘭」映画の受容に関する調査も進めた。これらの研究成果の一端は、4月に米国で行われたワークショップでの報告に反映させた。 (3)関連資料の集積と研究対象の絞り込み②。戦後占領期における日中戦争観を検討する目的で、極東軍事裁判と関連報道における日中戦争表象について、関連する先行研究や資料の集積と調査を進めた。また、石川達三や田村泰次郎ら、中国戦線での加害体験・加害記憶に関わる文学テクストの受容のあり方についても、分析を進めた。 (4)関連資料の集積と研究対象の絞り込み③。東アジアにおける戦争記憶の分断という現実を踏まえ、まぎれもなく「帝国の戦争」としてあったアジア・太平洋戦争の現実を踏まえ、戦時体制期における台湾人・朝鮮人の軍事動員に関する調査と分析を進めた。また、とりわけ戦時末期に過酷化した朝鮮人・中国人の強制連行に関わる先行研究の集積を進め、各地域における戦争記憶のあり方について検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の時期・対象の絞り込みを進めたことで、研究課題の問題関心をより適切かつ明確に展開するための足がかりを得ることができた。また、ワークショップやシンポジウム等で研究成果の公表を続けていく中で、問題意識を同じくする研究者との国際研究交流も含め、「日中戦争」「戦争記憶」をテーマとする新たなネットワークを構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2016(平成28)年度に得られた成果や知見をさらに発展させるかたちで、より具体的で、かつ国際的・学際的な協働が可能な研究テーマの構築と展開を目指す。引き続き、本研究課題に関わる研究成果の発信と公共化にも努める。
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Causes of Carryover |
新たな関連資料の発見・発掘に加え、当初に予定していた国外出張計画の変更が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017(平成29)年度分の請求額と合わせ、国内外での調査出張経費、資料の集積・複写、研究会・ワークショップの開催に関わる人件費などに使用する。
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