2015 Fiscal Year Research-status Report
現代ヨーロッパ文学におけるトラウマと創造性についての総合的研究
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15K12855
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
対馬 美千子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (90312785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 真理子 青山学院大学, 経済学部, 教授 (50190228)
田尻 芳樹 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (20251746)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サミュエル・ベケット / トラウマ / 現代ヨーロッパ文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.27年度はセクションごとにトラウマと創造性の問題についてベケット作品を軸に研究を行った。以下、セクションごとに見ていく。田尻:10月に原爆文学に関する発表を行い、「原爆文学」を現代英米のトラウマ理論との関連で考察し、新しい「証言」という概念を導入することで、長年の誤解からそれらの文学を解放することができるのではないかと論じた。11月には三島由紀夫に関する発表を行い、トラウマと日常性の関係について考察を深めた。堀:1950年代・60年代の冷戦下において欧米の多くの文学者に影響を及ぼした核の想像力をベケットの作品に照らして考察し、本研究の成果として英語で論文を執筆した。また、その考察を一部、『戦争・詩的想像力・倫理』の一章、「黙示録的時代(アポカリプティックタイムズ)を見据えて――第二次世界大戦後のサミュエル・ベケット」の中で論じ、ベケットが今日ジジェクが「黙示録的時代」と呼ぶ、核への脅威と不安をすでに表現していた点を考察した。対馬:以前にベケットの小説『ワット』の分析を通してトラウマと皮膚の関係について探究し、論文集に掲載予定の論文を執筆したが、27年度はその内容をトラウマと創造力のつながりという観点から再考し、書き直しを行った。またトラウマに関わるものとしてベケットのラジオ作品における言語と音楽の関係についても研究した。 2.1月にNicholas Johnson氏(Trinity College, Dublin)を招聘し、青山学院大学で開催された研究会において現代演劇の視点からベケットとトラウマに関する話をしていただき、意見・情報交換を行った。 3.研究成果を英語の論文集Samuel Beckett and Traumaとして出版するため、定期的に会合を開き意見交換を行った。またイギリスの出版社と交渉しながら、イントロダクションの執筆などの準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、27年度に実施が計画されていた(1)研究資料の収集・整理、(2)セクションごとの分析、(3)研究会における海外共同研究者との研究交流および意見交換、(4)論文集出版の準備のすべての点において、計画通り順調に作業が進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、以下の作業を進める計画である。(1)研究資料や文献を収集し、その資料をさらに充実させ、資料整理を行う。(2)前年度に引き続き、セクションごとに現代ヨーロッパ文学におけるトラウマと創造の問題について、ベケットの作品を軸に様々な角度から分析を行い、考察を深める。(3)国内外の学会で研究成果を発表する。(4)論文集出版のための編集作業を行う。 平成29年度は過去2年間の研究活動を通して得られた成果を全体としてまとめあげる。その延長線上で以下の作業を進める計画である。 (1)シンポジウム形式の公開の研究会を開催し、それまでの研究成果を提示する。(2)3年間の研究の成果を論文集の形でまとめ、研究叢書として英語圏の出版社から出版する。
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Causes of Carryover |
購入した書籍が予定していた金額よりも安価であったため、残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度の書籍の購入にあてる計画である。
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Research Products
(8 results)