2016 Fiscal Year Research-status Report
現代ヨーロッパ文学におけるトラウマと創造性についての総合的研究
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15K12855
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
対馬 美千子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (90312785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 真理子 青山学院大学, 経済学部, 教授 (50190228)
田尻 芳樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20251746)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サミュエル・ベケット / トラウマ / 現代ヨーロッパ文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.平成28年度は、前年度に引き続き、小説、演劇、思想のセクションごとにトラウマと創造性の問題についてベケット作品を軸に研究を行った。以下、セクションごとに見ていく。田尻: 5月に日本英文学会大会において現代イギリスを代表する小説家イアン・マキュワンの『土曜日』に関して「Ian McEwanにおける記憶、トラウマ、日常性」という口頭発表を行い、前年に三島由紀夫に即して考えた日常性とトラウマの関係について考察を深めた。そのほか授業などを通じてヴァージニア・ウルフ、ガートルード・スタイン、ジェイムズ・ジョイス、サミュエル・ベケットら20世紀前半の文学における日常性とトラウマの関係について研究を進めた。堀:ベケットの過去のトラウマ的経験がどのようにその演劇作品の創作に反映しているかを作者の伝記とからめながら考察した。また、ジジェクが「黙示録的時代」と呼ぶ今の時代にもなおいろいろな問題提起をベケットがすでに発信している点、その今日性を紐解くために、ベケットの影響がみられる劇作家(アントニオ・ネグリ、デビー・タッカー・グリーン、別役実など)の作品を分析・考察し、比較研究を試みた。対馬:現代のトラウマ理論の動向を探り、現代トラウマ理論とベケット作品の関係について再考し、その成果を論文集のイントロダクションの書き直しに役立てた。またベケットにおける創造力の問題を想像力の問題に関わるものととらえ、ベケットにおける想像力についての考察を行った。 2.研究成果を英語の論文集Samuel Beckett and trauma としてマンチェスター大学出版局から出版するため、定期的に会合を開き意見交換を行った。また共同研究者に連絡をとりながら、論文集の編集作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、28年度に実施が計画されていた(1)研究資料や文献の収集、資料整理、(2)セクションごとの分析、(3)国内外の学会での研究成果発表、(4)論文集出版のための編集作業のすべての点において、計画通り順調に作業が進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、以下の作業を進める計画である。過去2年間の研究活動を通して得られた成果を全体としてまとめあげる。 (1)シンポジウム形式の公開の研究会を開催する。シンポジウム形式の公開の研究会を開催し、それまでの研究成果を提示する。(2)論文集を出版する。3年間の研究の成果を論文集の形でまとめ、研究叢書として英語圏の出版社から出版する。
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Causes of Carryover |
論文集のフォーマット調整と英文校正にかかる費用が予定していた金額よりも安価であったため、次年度使用額とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
更に精緻な研究遂行のため、29年度の研究資料の追加購入にあてる計画である。
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