2016 Fiscal Year Research-status Report
米国における苦学生の実態的研究─明治期から大正期にかけて
Project/Area Number |
15K12859
|
Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
加賀谷 真澄 秋田県立大学, 総合科学教育研究センター, 准教授 (70635044)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江口 真規 秋田県立大学, 総合科学教育研究センター, 助教 (30779624)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 苦学生 / 力行会 / アメリカ / ハワイ / 満州 / 移民 / 苦学生の歴史 / ボストン日本人会 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、日本国内の資料収集に集中し、多くの苦学生を渡米させた日本力行会の機関誌『救世』、『力行』、『力行世界』を調査し、移民の流れをたどることができた。また、排日が移民の動きに影響を与え、アメリカ本土からハワイ、そして満州への流れが作られていったことを資料で確認した。 調査の中で、日系人社会でリーダー的な立場で活躍した人物の名が埋もれ、彼らの活躍や影響が看過されているケースがあることに気づいた。彼らの名前は、日本側の力行会関係の資料だけでなく、アメリカやハワイの現地の新聞にも載っているが、日本で出版されている人物事典には見当たらない。 一例を挙げると、力行会から渡米した若林捨一という人物がいる。この人物は苦学しながらアメリカ本土で学位を取得し、その後にハワイへ渡り、さらに満州へ移民している。当時の情勢でやむを得ない満州移民であったが、その後若林は政府系機関発行の出版物の中で、アメリカ・ハワイで排日に苦しむ同胞へ満州移民を呼びかけている。そしてそれが日本政府の意図であると述べている。 若林の名は、日本、アメリカ本土、ハワイ、満州で、それぞれ異なる出版物に、個人もしくは公人として出てくるが、実は一人の人物であることがわかった。成功を夢見て渡米した明治の苦学生の足跡を、満州移民までつなげることができたのである。 このように、「日系移民史」を「苦学生の歴史」という視点からみることで発見できる事柄が他にもあると思われる。この調査結果は、『近代文学資料研究』(近代文学資料研究の会、2017年6月発行)に掲載予定である。平成29年度も、苦学生の歴史に様々な角度からアプローチし、調査を継続して実施する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、連携研究者として平成28年8月から共同で調査を行っているラージ・ラキ・セン氏(平成28年度は筑波大学研究員、平成29年度より東京外語大学教員)とともに国際学会での発表や、米国での資料収集を実施する予定であったが、ヨーロッパ情勢や米国における新政権成立の影響など、現地での調査環境に不安要素が生じたために渡航を見合わせ、平成28年度の予定を次年度に延期することとした。このため、資料収集が当初の予定よりも遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年8月にはアメリカに渡り、ハーバード大学、イエール大学で日本人私費留学生の資料収集を実施する予定である。日本での資料収集・分析作業と合わせて、アメリカでの資料・分析作業が最終年度で完了する予定である。 また、明治期のボストンでは、ハーバード大学を含む、ボストンの複数大学の日本人留学生による「ボストン日本人会」が組織されており、その中にも苦学生が含まれていることが分かっている。ボストン地域の日本人留学生の交友関係も把握するよう務めたい。
|
Causes of Carryover |
平成28年度は、ヨーロッパ情勢やアメリカでの新政権の影響など、調査環境に不安が生じたため、出張を控えた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の資料収集のための旅費として使用する。
|
Research Products
(1 results)