2017 Fiscal Year Research-status Report
米国における苦学生の実態的研究─明治期から大正期にかけて
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15K12859
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
加賀谷 真澄 秋田県立大学, 総合科学教育研究センター, 准教授 (70635044)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江口 真規 秋田県立大学, 総合科学教育研究センター, 助教 (30779624)
SEN RAJLAKHI 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 特任助教 (20795611)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ボストン / ボストン日本人学生会 / ハーバード大学 / ボストン大学 / イエール大学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、米国に赴き現地調査を実施した。ハーバード大学、イエール大学、ボストン大学において在籍者名簿、卒業者名簿、学生手帳、そして学生クラブの写真等を確認することができた。これらの資料の中には複数の日本人名が掲載されており、且つ人物事典等で確認できない名前も存在したため、日本側の資料と照合する作業を今後進める。特にボストンには日本人学生の校友会が存在しており、大学をまたいだ日本人同士の交流や地域のアメリカ人を取り込んだ活動が活発だった地域である。その活動を記録した資料が一部が残っているため(『ボストン日本人学生会の記録』として三好彰氏により調査報告されている)、これを重要な資料として位置づけ、照合作業を進める。また、イエール大学では日本人留学生の記録がかなり早い段階から整理・保管されていること、しかしながら未整理の資料もあり、そこには日本人に関する情報も眠っている可能性があることが分かった。この資料については、平成30年度に調査を続行する。 28年度には「ある渡米苦学生─『力行世界』からの発見」『近代文学資料研究』NO2.を発表した。執筆作業を進める中で、日本人留学生が東海岸の大学で学ぶうちに、他大学に移っているケースが少なくないこと、そして進路の決定権を持つのは全ての費用を自分で賄っている私費留学生の特権であるということもわかってきた。私費留学生の中には、『力行世界』のような留学生支援の雑誌に日々の暮らしぶりや将来の進路の選択、迷いや後進への励ましなどを綴っており、私費留学生の生活だけでなく、心のうちまで垣間見ることができた。これらを次のステップに進む基盤とし、最終的な研究目標「米国における苦学生の実態的研究─明治期から大正期にかけて」の達成につなげていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年に欧州でテロがあり、オーストラリアでの比較文学会世界大会で研究発表を予定していたが、それができなくなったこと、そして社会情勢への不安がアメリカにおいても強まったため、現地調査を延期したため遅れた。 特にアメリカでの調査については、分担研究者に日本国籍以外の研究者がおり、欧米諸国に入国の際に問題が生じた事例を聞いていたため、自分自身ばかりでなく分担研究者の安全のために渡米を見送った。そのため、研究に必須の一次資料の収集が遅れた。平成29年度にはアメリカでの資料収集を行うことができたが、予想を上回る未整理の資料の存在が明らかになったため、もう少し時間をかけて整理・分析作業を行うつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、アメリカで収集した日本人留学生の資料を整理・分析し、人物の照合作業を完了させる。次に、1900年前後で発行された日英双方の新聞記事の中から、日本人留学生について書かれているものを取り上げ、第三者の視点で描かれた日本人留学生像を分析する。さらに「ボストン日本人学生会」の資料や、留学生支援をしていた「力行会」の機関紙『力行世界』に寄稿された私費留学生たちの寄稿文から、明治期から大正期にかけて、アメリカ東海岸で独力で学問を修めた日本人留学生たちの具体像を明らかにしていく。 これらの研究を通して得られた研究成果は日本においては、日本社会文学会、日本移民学会で発表し、アメリカにおいてはアジア研究協会(Association for Asian Studies)での発表を予定している。 平成30年度は最後の研究年になるため、研究を完遂させることに集中するが、ボストン周辺には明治から大正期にかけて日本人が在籍していた大学が多数存在しており、それらの大学についての情報取集も同時に行っていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
資料収集の進捗状況を考慮し、平成29年度の実施分を平成30年度までに延長したため。残額については、研究成果の取りまとめのための費用として使用予定である。
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Research Products
(1 results)