2016 Fiscal Year Research-status Report
アメリカの大衆音楽聴取者による文学的価値の外在化行動に関する研究
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15K12862
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
石崎 一樹 奈良大学, 教養部, 教授 (70330751)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 文学的価値 / インディーロック / 教養 / 祝祭 / フェス / DIY / アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、アメリカ合衆国で開催されるインディー系アーティストが出演するロックフェスティバルでの2度の聞き取り調査を計画していたため、ニューヨーク州ランドールズアイランドパークで行われたPanorama Music Festival、ならびにテキサス州オースティンで行われたAustin City Limitsでの聞き取り調査によるサンプル収集を実施した。研究の目的は、アメリカのポピュラー音楽に、これまでにはない規模で顕在化する文学的想像力の実状と方法論を追求することであり、その際、パンクロックに由来しするも今日的意味に変質し、すでにジャンル化した「インディーロック」が若者の知識欲を満たすツールとして機能している状況も見られることから、ロックフェス来場者のなかでもインディーロック志向を持つ来場者に焦点をあてる。 Panorama Music Festivalでの調査は、平成28年7月20日から7月26日の期間に実施した。株式会社Some EchoesのA&R担当 吉武健氏による取材協力を得て、来場者の属性や嗜好を分析するため、現地で聞き取り調査を行った。また、本研究の対象がインディーロック聴取者であることから、継続して実施している業界関係者への聞き取り取材として、アメリカで有数のインディーレーベルであるポリヴァイナル・レコードのNY支部長Mark Kenny氏へのインタビューを行い、アメリカのインディー音楽をめぐる現状や日本のステークホルダーとの関係などについて話を聞いた。 Austin City Limitsでは、平成28年9月29日から10月5日の期間に、株式会社Some Echoes代表取締役 斎藤悠哉氏からの協力を得て調査を実施した。Austin City Limitsでの取材は2年目となり、一定の取材地で経年での定点観測を結果として行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は平成29年度までの3年間の計画で実施しており、中心的な活動である音楽フェスティバルでの聞き取り調査について平成28年度は2度の調査を計画し、遂行した。一方で、サンプル収集活動へのエフォートの割合が増加したために、論文や研究発表などでの研究のフィードバック活動の割合が低くなった。また、本研究の研究計画では取材する音楽フェスティバルについて、可能な限り異なる場所での取材を予定していたが、時期的制約から取材が可能なフェスティバルが一定程度限定されることが理解された。 総合的には、完成年度となる平成29年に研究成果をまとめるための資料は順調に収集できており、また主な活動である音楽フェスティバルでの取材、業界関係者への取材も問題なく遂行できており、本研究は順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成29年には、当初計画ではカリフォルニアで4月に行われるCoachella Valley Music and Arts Festivalへの参加を予定していたが、スケジュール上実施が困難であると判断したため、8月上旬にシカゴで行われるLollapaloozaへの参加を予定している。また最終年度として、論文や書籍などの形で成果を積極的に発表する予定である。 取材地をより多様に選択することが望ましいと当初計画では定めたが、実務スケジュールの観点からこれが困難であると判断されたものの、一方で、一定の取材地での経年での定点観測を行うことによる利点があることから、この利点を活かすような研究成果を導く方向性の導入を検討している。
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Causes of Carryover |
計画時点の為替相場から円高となり、米国内での宿泊費などの支出が計画当初予想に比べて少なかったことが主な理由である。調査の機会を多くし有意なデータを数多く収集することが本研究の目標遂行のために重要であることを鑑み、調査回数の増加に繋げられるように次年度使用額についての使用を予定している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、米国までの1回分の渡航費用になりうる額であるので、これを今年度の調査渡航を1回から2回とし、調査の機会を増やす計画とする。
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