2016 Fiscal Year Research-status Report
第二次大戦期スイスのラジオ戦争-フォン・ザリスのニュース「世界年代記」を事例に
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15K12866
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
葉柳 和則 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (70332856)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スイス文化 / ラジオ / 精神的国土防衛 |
Outline of Annual Research Achievements |
スイス関連の研究会(スイス科研研究会、デュレンマット研究会)において口頭発表および意見交換を行い、研究の方法と分析結果の妥当性を検討した。議論の軸となったのは、元々はドイツ語圏スイスの文学・文化に関する問題関心からスタートした本プロジェクトであるが、研究の進展につれて、歴史学や政治学の領域へと議論の枠組を拡げていく必用が生じ、そのことが、文学・文化研究中心の学会におけるプロジェクトへの理解を妨げることになっていること、それを乗り越えるための議論の枠組の構築であった。このような議論をフィードバックさせる形で、研究計画とプロジェクト全体の枠組みの再検討をした。調査に関しては、スイス、ベルン市のスイス文学アーカイヴにおいて、フォン・ザリスのラジオ報道番組『世界年代記』の未発表原稿調査を行った。ここにおいて明らかになったのは、スイス政府の文化担当官がドイツ政府宛に作成した資料の閲覧のためには、ベルリンでの資料調査が必要だというおとである。また、リスナーからの手紙の閲覧とノートテイキングを行った。以上を踏まえて、本研究の三つの柱のひとつである「世界年代記」のテクスト分析を行った。成果の一部は論文集『チューリヒ劇場と文化の政治』(日本独文学会研究叢書 117)において公開した。フォン・ザリスの活動の持つ意味を理解するためには、彼が生きた時代のスイスにおける文化的環境の基底を形作っていた精神的国土防衛運動についての理解を深める必要がある。平成28年度の研究は、この基底を明らかにすることに力点を置いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スイス文学アーカイヴの資料は、原則複写が禁止されており、必要箇所をノートする作業が必要であるため、調査には時間を要する。しかし、平成28年度に予定していた部分に関してはおおむね閲覧とノートテイキングを完了することができた。研究成果についても一部を公開することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はいっそう本格的にベルンのスイス文学アーカイヴでの未刊行資料の閲覧とノートテイキングを実施するとともに、スイス国立図書館およびドイツ国立図書館において、関連資料の閲覧と複写を行う。研究の成果については、今年度の秋以降、学術誌に投稿する予定である。また、学会や研究会等で収集した資料やその分析結果を議論に供する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していたよりも、必要な書籍の購入費用が低額に収まった。その理由は、BookFinder等の網羅的な古書店サイトを積極的に活用し、極力低コストで資料収集を行ったことにある。また、勤務先での用務との関係上、予定よりも出張期間が短くなったことも、次年度使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、資料収集をいっそう本格的に行い、調査および学会・研究会での報告を積極的に行うため、繰り越した予算と当初から予定していた予算を合わせることで、3年間トータルの研究計画を実現することができる。したがって、海外調査のための旅費を確保した上で、国内での研究会開催のための旅費、学会発表のための旅費、論文校閲費用、論文投稿費用、資料収集費用を過不足なく使用する予定である。
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