2015 Fiscal Year Research-status Report
中国現代文学における通俗小説――Xu Xu・Wumingshiを中心に
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15K12869
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
杉村 安幾子 金沢大学, 外国語教育研究センター, 准教授 (50334793)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 通俗小説 / 無名氏(Wumingshi) / 徐ク(Xu Xu) |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、本研究の基盤となる以下の4点を集中的に行なった。 1.資料の定型的・集中的収集:徐ク(Xu Xu、“ク”は偏が「言」、作りが「于」)と無名氏(Wumingshi)に関連する資料および文献と中国通俗文学に関する研究論著を集中的に行なった。9月には、上海と無名氏が1980年以降、逝去するまでの後半生を過ごした台湾に出張し資料調査を行なった。具体的には上海図書館および国立国家図書館で1940年代と1980年代の新聞を調査した。また、無名氏の小説の初版本を可能な限り収集した。 2.データの整理・統括、資料集・書誌作成:収集したデータや資料を統括して資料集の作成を行なっている。これはまだ完成形ではなく、最終年度における完成を目指している。完成後は、日本ではこれまで体系化されていなかった徐クと無名氏に関する重要な基礎資料となることは間違いない。 3.資料の精読・考察:「通俗性」「政治性」「時代性と地域性」「アカデミズム」などを主眼に据えて徐クと無名氏の作品を精読した。無名氏に関しては、小説を発表順に通読し、徐クに関しては、現時点では最も網羅的である『徐ク文集』(上海三聯書店、2008年)全16巻中、小説巻8冊と戯劇巻1冊を通読し、プロットや物語の傾向などについて類別した上で読書記録をまとめた。次年度以降の研究成果発表に確実につながるものである。 4.成果発表・対外発信:上記の作業・調査を受け、成果としては論文「無名氏『北極風情画』考――「通俗戦略」を超えて」(『野草』(中国文芸研究会機関誌)第96号、pp.17-36)を挙げることができる。また、2015年度金沢大学公開講座『各国シリーズ:文化・文学にみる恋愛』の主任講師を務め、第1回「悲劇で成就する中国式恋愛」において日本ではほとんど紹介されてこなかった無名氏の『北極風情画』と『塔の中の女』を紹介し、社会への還元を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度においては、徐クと無名氏の作品の精読が予想よりも進み、研究成果発表の基となる下地が揃いつつある。この点は所期の目的を充分に達していると言える。 ただ予想外であったのは、徐クと無名氏の初版本の収集に関しては、日本国内の所蔵図書館がほとんどなく、また唯一の所蔵館も貸出を行なっていない場合が多かったことである。これは貴重資料の保存の観点に鑑みて致し方ないため、平成28年度以降は国外での収集・渉猟を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は前年度に引き続き、徐クと無名氏の関連資料・文献の収集を行ない、その上で作品の精読・紹介・研究報告を主要な研究活動とするつもりである。具体的には以下の4点である。 1.資料の収集:徐クと無名氏の小説の初版本の収集を集中的に行なう。上海図書館での資料収集を予定している。 2.資料集・書誌の作成:徐ク研究・無名氏研究の基礎とすべく、体系的な資料集・書誌作成を目指す。 3.作品の精読・考察:「通俗と悲恋」「通俗と美男美女」の2点を中心に、徐クと無名氏が活躍した1940年代中国の読者の嗜好を探る。 4成果発表:徐クの短編小説に関する研究発表を予定している。また、無名氏の中編小説『塔の中の女』に関する論文執筆も行うものとする。
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