2017 Fiscal Year Annual Research Report
Popular novels in the modern Chinese literature: A study of Xu Xu and Wumingshi
Project/Area Number |
15K12869
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
杉村 安幾子 金沢大学, 国際基幹教育院, 准教授 (50334793)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 通俗小説 / 無名氏(Wumingshi) / 徐ク(Xu Xu) / 戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は本研究の最終年度として、研究の統括とすべき以下の2点の論文執筆を行なった。タイトル・刊行媒体は別記する。 1点目は、申請者が研究分担者を務める学術研究助成基金助成金基盤研究(C)「日中戦争時期重慶における民族主義文壇と国民党系知識人の内陸都市間連携」(大阪教育大学 中野知洋,平成29~31年 課題番号17K02642)における研究と連携しつつ、作家徐クの重慶滞在経験を基にした短編小説「春」を、日本軍による「重慶爆撃」(1938年12月から1941年9月)をキーワードとして考察した作品論である。一見、穏やかで微笑ましい恋物語に見える本作が、実は重慶爆撃を経たゆえの展開となっている点を指摘した。この指摘は、申請時点で本研究の「目的」として考えていた「民衆と戦争」との関係の一端を明らかにしており、中国本国の研究者が看過している徐クの戦争に対する重要な問題意識を明確にできたと自負している。 2点目は、現在執筆中であるが、作家無名氏の中編小説『塔裡的女人』の作品論である。本作は無名氏の1940年代の代表作2作のうちの一つであり、中国現代文学研究における「通俗」の問題を考える上で重要な地位を占めている。申請者は徐クと無名氏の小説に共通する要素として① 美男美女による悲恋、②奇想天外な展開、③異国情緒、④庶民生活とはかけ離れた貴族的都市文化の4点を考えているが、それらが全て盛り込まれており、且つ刊行当時一大ベストセラーになったという意味でも、『塔裡的女人』を1940年代中国通俗小説の頂点とも考えている。2018年8月には本論文を基にした口頭発表を予定しており、収録された論文集は来年度刊行予定である。
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