2017 Fiscal Year Research-status Report
在日朝鮮人における文学活動と民族意識の変化―組織の機関紙を通して
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15K12872
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
呉 恩英 愛知淑徳大学, 教育部門・センター, 講師 (10722564)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 在日朝鮮人文学 / 『解放新聞』 / 『朝鮮民報』 / 『朝鮮新報』 / 『民主新聞』 / 『韓国新聞』 / 『朝鮮新聞』 / 『統一朝鮮新聞』 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度は『朝鮮新報』の5年間及び各機関紙の一部期間を除いて、予定していた資料(総連系の『朝鮮民報』と『朝鮮新報』を、中立立場の『統一朝鮮新聞』、民団系の『韓国新聞』)に載せられた文学関連記事に関する資料を調査した。その中で『朝鮮民報』と『朝鮮時報』そして『民主新聞』を中心に作品や記事を整理し検討及び分析を行った。こうした研究活動の成果はThe 13th ISKS International Conference of Korean Studiesと日本比較文化学会第39回国際学術大会にて報告した。 まだ一部の資料収集が行われていない状況ではあるが、今までの資料を全体的に見ると、総連系の朝鮮語版『解放新聞』と『朝鮮民報』、そして日本語版『朝鮮総連』と『朝鮮時報』には、当時の北朝鮮、日本、韓国に関わる記事だけでなく、許南麒、李殷直等の詩や小説が掲載されており、他にも随筆、評論等、あらゆる分野について積極的に取り上げられていた。その反面、民団の機関紙『民主新聞』には、総連系に比べると、文学やそれに係わる記事が紙面を占める割合は非常に少ない。これは民団という組織が弱体であったことが一番大きい原因とも言えよう。そのため、文学や芸術活動をしたい人々はいたものの、それを養成する環境や活動できる場が無く、作家活動をするには困難であった。 また総連系と民団系や『統一朝鮮新聞』の掲載構成面においては対照的だということが分かった。1950年代の『解放新聞』には北朝鮮(越北)作家の作品が多く、1960年代には在日朝鮮人作家の作品の割合が高くなる。反面、民団系の機関紙や『統一朝鮮新聞』には発刊初期においても在日朝鮮人作家の作品は少なく、1960年代には殆どが韓国作家の作品を翻訳したものである。この点で本研究のテーマで在日朝鮮人における文学活動の変化を検証するに相応しい成果が見えてきたと言えよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は一次的資料を調査した上で、作品などの内容を把握し分析を行うものである。だが、授業期間中に公立図書館などに散逸している資料を長期間足を運び調査することが難しい状況である。さらに資料の保存状態が悪いため、複写ができないこともあり、予想以外に時間がかかってしまった。 計画していた資料を全て収集できなかったものの、機関紙を通して在日朝鮮人の文学活動の変化がより明確に見えてきた。その中で『朝鮮民報』や『朝鮮時報』についての研究成果を公表することができ、引き続き次年度に『民主新聞』についての研究成果を発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度9月末までに精力的に公立図書館などへ足を運び資料調査を終える。まだ見つかっていない資料については関連研究者及び日本の新聞社等に協力を得ながら資料の整備に努める。 今まで調査した資料をジャンル別に分類しデータ化して、文学活動と民族意識の変化について検証する。特に民団系の機関紙や『統一朝鮮新聞』より総連系の機関紙に在日朝鮮人作家の作品が多く掲載されていることが明確になったので、総連系の機関紙を中心に各機関紙の作品及びその変化を比較分析する予定である。最後に在日朝鮮人文学の関係者を招き、シンポジウムを行う予定である。
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Causes of Carryover |
調査する資料の量が予想より多く、授業期間中には長期出張が難しいことから、資料調査が遅れていた。そのため、次年度使用額が生じた。 次年度には、『朝鮮新報』の資料調査を行うために公立図書館等への出張旅費を中心に使用し、研究成果を報告するためのシンポジウム開催に支出する計画である。
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