2017 Fiscal Year Annual Research Report
Regarding the conventional scripts used in the Shuo Wen Jie Zi
Project/Area Number |
15K12878
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
山元 宣宏 宮崎大学, 教育学部, 准教授 (60571156)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 説文解字 / 書体 / 戦国文字 |
Outline of Annual Research Achievements |
ここ数年中国各地の戦国秦漢期遺跡から、当時の通行書体であった篆書や隷書で書かれた簡牘の発見が相継いでいる。そこに使われている「篆書」や「隷書」という名称は、文字学や書道史の研究領域においてはもちろんのこと、さらに印鑑や印刷のフォント名などを通じてあまねく人口に膾炙しているが、しかしそれらがなぜ篆書あるいは隷書と命名されたのか、その正確な理由はまだ解明されていない。篆書や隷書という名称が最初にまとまって記述される文献は、『漢書』藝文志と『説文』叙、それに荀悦『漢紀』など後漢時代の史料である。『説文』叙によれば、葬新の時に六体があり、先んじて秦代には八体があった。このような書体の名称に関する先行研究として啓功『古代字体論考』があるが、啓功は個別の書体名を文献を中心にたどることに終始しており、一貫した体系としてとらえたものとはいいがたい。また近年には裘錫圭『文字学概要』が篆書や隷書に対して示唆に富む解釈を展開するが、それも仔細に検討すれば全面的に首肯できるものではなく、また裘氏の指摘をうけてそれを深めようとする議論もほとんどないのが現状である。書体名に関する従来の研究は文献の記述に偏重したアプローチのみであって、書体を近年の出土資料と照合し、その名称のよってきたる所以を考察しようとする方法はほとんど存在しなかった。中国文字学史から個々の名称自体への考察はなされるが、肉筆資料と有機的に結びつけるような一貫した視点がなかったといえよう。本研究は書体の名称が存在するということは、そこには必ず命名者の企図が存在するはずである。この視点から書体名称が前漢末期まで遡ることを指摘し、その背景に漢代の経学における最大の問題であった今文・古文の学派対立が反映されていることを明らかにする。
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Research Products
(2 results)