2016 Fiscal Year Research-status Report
知的障害者にわかりやすい情報提供のあり方に関する領域横断的研究
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15K12882
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Research Institution | Shukutoku University Junior College |
Principal Investigator |
打浪 文子 淑徳大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (30551585)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩倉 裕子 (大塚裕子) 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 特任准教授 (10419038)
岩田 一成 聖心女子大学, 文学部, 准教授 (70509067)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 知的障害者 / 外国人 / わかりやすい情報提供 / やさしい日本語 / 「ステージ」 / 「NEWSWEB EASY」 / 社会福祉学 / 計量言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は知的障害者の主体的な社会参加を可能にするために、知的障害者にとってわかりやすい日本語の語彙や文法構造等を明らかにすることを目的とする領域横断的研究である。以下の3つの分担課題の解明を中心に取り組んでいる。1)知的障害者の情報伝達・コミュニケーションの場面の言語的特性の解明及び暗黙知の明文化、2)知的障害者が編集に参加した新聞テキストの言語的特性及び一般的な新聞テキスト比較による言語的特性の共通・相違性の解明、3)外国人向けの「やさしい日本語」研究と知的障害者の「わかりやすさ」の共通・相違性の解明。
平成28年度は各分担課題について以下を明らかにした。 分担課題1):知的障害者の視点から見た「やさしい日本語」(外国人向けの情報提供)の応用可能性について、NHKの「NEWSWEB EASY」 のウェブサイトを用いて行った聞き取り調査の分析を実施した。結果より、外国人よりも視点移動や行間等に配慮する必要性、外国人むけ情報提供と異なる知的障害者視点からの難解語彙および平易な語彙の群を明らかにした。また、機器操作やウェブ検索などにおける知的障害者固有のITリテラシーに関する課題を明らかにした。 分担課題2)および3):平成27年度の調査(知的障害者むけ新聞「ステージ」と外国人向けのNHKによるニュースサイト「NEWSWEB EASY」の相違点の計量言語学的解明)に加え、難解語彙の相違の比較と、その傾向の解明に関して新たな分析を行った。結果より、「ステージ」とNHKの「NEWSWEB EASY」の共通点として外来語」や「人の属性を表す語」といった名詞や動詞を中心とした書き換えの難しい難解語彙の群があることを明らかにした。また、ステージに特有の傾向とされる「のりしろ」(文と文の間に重複箇所を設定することで両者の関係を明示的にすること)と呼ばれる現象について、その詳細を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、各分担課題について以下のように研究を進行することができた。 分担課題1):ここまでの知見をまとめて、学会発表を行い成果を公表した。また、次年度以降に分析を予定している研究データを収集した。 分担課題2):「ステージ」単体のテキスト分析を進めつつ、アノテーション化を行った。分担課題2)の単独分析のみならず、分担課題1)および3)に寄与できる研究コーパスの作成を行った。 分担課題3):平成27年度に行った知的障害者むけの新聞「ステージ」と、外国人向けのニュースであるNHKの「NEWSWEB EASY」の計量的比較や語彙の比較についてあらたな分析を行い、成果をまとめ論文として執筆し投稿することができた。さらに、その結果・考察から得られた示唆と今後の課題に基づき、「ステージ」と「NEWSWEB EASY」を同一の元記事より作成し比較する書き換え実験を検討し実施した。なお、これらの調査結果を平成29年度に成果報告を行えるよう、研究代表者・分担研究者・連携研究者らと共に研究会を持ちつつ分析に着手している。
総じて、全体計画における3分の2程度を達成しており、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目となる29年度は、28年度中に収集したデータの分析を行い、その成果を公表する。また、あわせて分担課題1)2)3)の研究知見を統合し、知的障害者にとっての「わかりやすさ」についての研究成果のとりまとめを行う。具体的には以下のように進行する予定である。
分担課題1):「ステージ」と「NEWSWEB EASY」の書き換え実験(平成28年度)の際に録音したデータを分析し、知的障害者らが時事情報を読む際に感じている困難を当事者視点に基づき明らかにするとともに、「わかりやすく」する過程の詳細を明らかにする。 分担課題2):「ステージ」単体の分析から、作成された年代ごとに難解語彙や文体の特徴を明らかにする。あわせて、「ステージ」前年度分のテキスト化およびアノテーションを完了させ、研究成果とあわせコーパスを公表できるよう準備する。 分担課題3):「ステージ」と「NEWSWEB EASY」の書き換え実験(平成28年度)から得られた研究データを基に、知的障害者向けの「わかりやすさ」と外国人向けの「やさしい日本語」のより厳密なかたちで比較検討し、相違・共通性を追究する。
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Causes of Carryover |
現在、分担研究者が知的障害者むけの新聞である「ステージ」の全テキスト化およびコード付与を行っている。これにかかる費用の見込みが、開始段階に予想していたよりも高額となったことが平成28年度中に判明した。 そのため、本年度および次年度は「ステージ」の全テキスト化を最優先とし、それに伴って平成29年度の配分を大きく変更することとした。 よって、研究代表者と研究分担者は、平成28年度半ばの時点で次年度分担額が少なくなることが予想された。そのため、次年度に必要な旅費・物品費・謝金を確保するため、平成28年度に配分されていた予算の一部を調整した。これにより次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額は、次年度の成果報告の旅費、および情報収集のための書籍等の物品費、および分担課題1)の聞き取り調査の謝金に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)