2016 Fiscal Year Research-status Report
海外で日本語を学ぶ子どもの日本語能力の把握と教材研究
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15K12900
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
川上 郁雄 早稲田大学, 国際学術院(日本語教育研究科), 教授 (30250864)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 年少者日本語教育 / 移動する子ども / バンドスケール / 複数言語環境 / 複言語複文化能力 / 日本語能力 / 教材開発 / ことばの力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本国外において、幼少期より複数言語環境で日本語を学ぶ子どもたちの日本語能力を把握方法とそれを踏まえた教材開発し、これらの子どもを対象にした新たな日本語教育の方法を提案することを目的としている。本年度は、前年度の研究成果をもとに、ふたつの学会で研究発表を行った。9月に、社会言語科学学会では「国際移動する日本語使用者の言語実践とアイデンティティ」と題して共同発表を行った。また、引き続き、9月に、インドネシア・バリで開催された日本語教育国際大会では「「移動とことば」の視点から見る、個人にとっての日本語使用の意味と位置付け」として共同発表を行った。どちらも、「移動する子ども」を分析概念とした研究発表を行った。 さらに、海外調査を行った。ことばの教育を構想するためには、複言語複文化能力をどう捉えるかが重要である。また、それを捉えただけではなく、当事者である子ども、そして幼少期より複数言語環境で成長した体験を持つ大人がその体験をどのように意味づけて経験として記憶し、生きていくかという課題を全人的視点で、またライフコース全体の中で考えることが不可欠である。そのため、本年度は3月にドイツでの調査を実施した。幼少期より複数言語環境で成長しつつ日本語を習得してきた20代から40代の10名にインタビュー調査を行った。 この調査によって得られたデータをもとに「移動する子ども」の分析視点である3点、1、空間移動、2、言語間移動、3、言語教育カテゴリー間移動から分析を行った。その結果、幼少期より親によって生育された環境がこれらの3点によって分析されると同時に、子どもであった調査協力者の心情や経験、意味世界が分析された。これらの成果から日本語教育の教材開発においても、「移動する子ども」の視点が必要であることが、あらためて確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本国外において、幼少期より複数言語環境で日本語を学ぶ子どものことばの教育を構想するためには、複言語複文化能力をどう捉えるかが重要である。また、それを捉えただけではなく、当事者である子ども、そして幼少期より複数言語環境で成長した体験を持つ大人がその体験をどのように意味づけて経験として記憶し、生きていくかという課題を全人的視点で、またライフコース全体の中で考えることが不可欠である。そのため、本年度はドイツでの調査を実施した。2017年2月から3月に、ドイツで調査を行った。そこで得られたデータは、今後の教材開発にも十分に役立つものと考えられる。したがって、本研究もおおむね順調に進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を踏まえて、次年度(2017年度)も研究を継続する予定である。また、成果発表としては、2017年9月に、ポルトガル・リスボン市で開催されるヨーロッパ教師会シンポジウムで、共同発表をすることが決定している。また、国内では、2017年4月に「移動とことば」第3回研究会を実施する。その研究会にはすでに国内外から多数の研究発表の申し込みがあり、本研究との研究交流が期待される。さらに、国内でのJSLの子どもへ向けたユニット教材開発も行っている。その成果を踏まえて、国外で使用できるグローバルバンドスケールの基礎研究を進める予定である。
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