2016 Fiscal Year Research-status Report
不安心理に対応した英語表現授業によるアサーティブ学習ストラテジーの構築
Project/Area Number |
15K12928
|
Research Institution | Kagoshima National College of Technology |
Principal Investigator |
坂元 真理子 鹿児島工業高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (60370061)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
保坂 直之 鹿児島工業高等専門学校, 一般教育科, 教授 (80280501)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | コミュニケーション / 英語教授法 / 不安心理 / 外国語不安 |
Outline of Annual Research Achievements |
外国語学習者が目標言語でのコミュニケーションを行う際に感じる不安感は、一般的に誰しもが感じる漠然とした不安感や、不安感についての学習者の個人的な性格特性とは別に、「外国語不安」あるいは「コミュニケーション不安」という、外国語を使ったコミュニケーションあるいは授業活動といった特定の状況下において繰り返し体験される不安感として認知されている。平成28年度は、工学系の学科に所属する日本人の英語及びドイツ語学習者を対象として、学習者が外国語でのコミュニケーション能力を習得する過程における阻害要因の一つである不安心理(コミュニケーション不安)について、その構成要素とコミュニケーションへの態度に関する調査を行った。英語学習者については特に、調査研究だけでなく授業活動、グローバルプロジェクトを通した試行的な実践活動を行う事が出来た。調査については、収集したデータを分析した結果、中学校を卒業した段階での英語学習者は、先行研究に見られるような外国語不安と中学校までの英語の授業活動で典型的な活動そのものに対する不安・苦手意識を持っている一方で、学習内容そのものについては難しさを感じていないということがわかった。また、学習者の不安心理を取り除き自己肯定感を増進させるための心理的支援についての調査としては、スウェーデンの教育機関や移民の社会的支援に関するいくつかの施設の視察調査を行い、支援システムや技術について、専門家や当事者から多くの貴重な情報を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、対象である英語学習者の外国語不安の構成要素について、学習開始直前及び2-7年後の心理的状況を横断的方法にて調査分析を行い、その結果を国内学会で口頭発表した。英語学習者のコミュニケーション能力を育成しコミュニケーションへの持続的な動機づけを行うために、それに伴う不安を取り除き自己肯定感を高めるための教授法や支援技術・教材の開発が必要となる。現在は授業の中で英語コミュニケーション活動を定期的に行うとともに勤務校の国際交流委員会と連携し、英語母語話者や第二言語としての英語話者と英語でのコミュニケーションを通じて作業を行う複数のプロジェクトを運営実践した。またその開発の基礎として、スウェーデンの各教育施設の視察調査を行った。スウェーデンにはコミュニケーションに不安を持つ児童生徒や社会性に問題のある児童生徒の支援を行う制度があり、また教育現場でも教員や専門家、政府施設がチームを構成して支援を行っている。また、スウェーデンでは移民が外国語としてスウェーデン語を学習し社会の構成員として馴染んでいくための施設や法が整備されている。これらのシステムや現状について調査するため、スウェーデンの小・中学校、高等学校、日本人補習校、特殊教育学校、移民センター、多文化センターを訪問し、施設や授業、支援についての視察を行った他、教員や専門家、施設責任者、児童生徒等関連者へ詳しいインタヴュー調査を行った。特殊支援センターも訪問する予定であったが、実際の現場が多忙を極めているとのことからこの施設の今回の視察は見送りとなり、視察を行った学校において専門家にその施設との連携についてのインタヴューを行う事で補った。また勤務校の業務の量が申請当初の予定をはるかに上回ったため、調査内容の論文までは作成することはできなかった。このため、当該年度の予算の一部を繰り越し今後の学会発表や論文掲載費に充当する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としてはまず、今年度に行った視察調査の結果をまとめ、特殊教育関連の国内学会で発表し論文を投稿する予定である。従来の英語教育では学習者の英語でのコミュニケーションや異文化への興味関心を高めるために様々な教授法や教材についての研究がなされてきたが、学習者の学習時やコミュニケーション時の不安感や自信について心理的側面からのアプローチを行なった研究は行われていない。また、日本の教育現場を全般的に鑑みても、学校及び授業活動の中で社会性の育成に支援が必要な児童生徒のサポートは主に現場の教職員の判断と活動に依存しているのが現状である。そのため、我々が今回スウェーデンの視察調査から得た知見を取りまとめて発表することは、教育現場及び支援体制の改善のために有益であると考えている。 このほか、勤務校の国際交流委員会と、スウェーデンを拠点にヨーロッパやアジアの数か国で活躍しつつ教育分野にも明るいIT技術指導者らと連携し、世界でも最新の技術にあたるAugmented Reality (AR)やVirtual Reality (VR)を使用した英語コミュニケーション中心のcontent-basedワークショップを開催し、その際の参加者の英語でのコミュニケーション時の情意面を支援する効果的な方法について、実践や調査を行う計画を立てているところである。また、その内容をまとめ、国際学会等で発表する予定である。 調査対象としている英語学習者に対しては縦断的データを平成29年度4月に集めたところである。このデータも含め、1年間にわたる活動の結果について、国内外の学会で7月に発表を行う予定である。また、平成28年度に発表した調査内容は、平成29年度に学会紀要に投稿する予定である。
|