2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K12932
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永原 陽子 京都大学, 文学研究科, 教授 (90172551)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 近代ピアノ / 象牙 / 植民地貿易 / アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代ピアノ成立の社会経済的、また文化的意味をその物質的な側面から探究することを目的としており、大きく分けて、製造にかかわる側面と出来上がった製品の普及にかかわる側面の両面から追求してきた。第2年度の2016年度は、下記のような研究を進めた。 (1)文献史料の収集・調査:前年度に続き、近代ピアノ製造史にかかわる文献(スタインウェイ社、ベヒシュタイン社、ブリュートナー社の社史)の中から材料にかんする記述などを拾い上げる一方、イギリス、ドイツ、アメリカの貿易統計類から、材料(とりわけ象牙、黒檀、チーク材)の移動にかんする調査を進めた。 (2)聞き取り調査:日本国内でのピアノ技術者からの材料使用の変遷にかんする聞き取りを行うと同時に、ドイツではベルリンにおいてスタインウェイおよびベヒシュタインの、またドレスデンにおいてベヒシュタインの、さらにライプツィヒにおいてブリュートナーの技術者から材料の移動および製品の移動にかんする聞き取りを行った。 (3)現物調査:ベルリン楽器博物館およびライプツィヒ楽器博物館において、近代ピアノ成立以前の各種鍵盤楽器の現物調査を行い、とくに象牙鍵盤の導入にかんする年代調査を行った。また、ブリュートナー楽器収集館において、19世紀後半から20世紀前半の博覧会出品関係のデータを収集した。 (4)製品移動にかんしては、前年度に行った南アフリカ調査で収集した近代ピアノの輸入・普及にかかわる史料(輸入関連史料、公共機関の入札史料など)の分析から、製品の輸入と普及の時期、規模、具体的な事例について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献調査、聞き取り、現物の各方面にわたって調査を進め、原材料の移動にかんするおおよその見通しを得ることができた。第1年度に進めた製品の移動にかんする調査の結果(アフリカ大陸の事例)と合わせ、「マテリアルヒストリー」の基本的な概容を得ることができ、当初の計画に沿った進捗となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の2017年度はさらに調査対象をフランス系・イギリス系楽器にも広げつつ、成果をとりまとめ、学会報告の形で中間報告するとともに論文執筆にとりかかる。
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Causes of Carryover |
2016年9月の海外出張で、当初予定していた日数が確保できなかったことおよび、航空チケット代が当初予想より低額で済んだため、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度に発生した次年度使用額は、2017年度に予定している海外出張費に繰り入れるとともに、論文校閲費用に充当する予定。
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