2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K12934
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐野 方郁 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 准教授 (10403205)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日暹寺 / 都市史 / 国際交流史 |
Outline of Annual Research Achievements |
日暹寺は元々、1898 年にイギリスがインド北部で発見し、翌1899 年にシャム王室に寄贈した釈迦の「真骨」の一部を日本の仏教界が譲り受け、それを安置することを目的に、1904 年に愛知郡田代村(現在の名古屋市千種区法王町)に建てられた寺院である(1939年に日泰寺に名称変更)。「真骨」を安置する奉安塔が完成したのは1918年であった。 本研究は、1902年から1918年までの『新愛知』『中京新報』『名古屋新聞』だけでなく、同時期の『京都日出新聞』の全紙面を閲覧し、それを断片的に残っているその他の一次史料と組み合わせることで、明治・大正期の日暹寺(日泰寺)の歴史を包括的に再検討していくことを目的とする。筆者は本研究が科学研究費助成事業の挑戦的萌芽研究に採択される前から、各紙の閲覧作業を進めてきた。平成27年度は、これまでの作業の続きとして、『名古屋新聞』の1906年11月から1914年12月、1916年5月から1917年12月、1918年7月から1919年11月、及び『新愛知』の1918年7月から1920年12月までの延べ12年9ヵ月分の全紙面を閲覧し、必要箇所の複写を行った。 これまでの調査からは、(1)名古屋市側の計画がかなりずさんであり、そのことが「真骨」を安置するための奉安塔の建設が1918 年までずれ込む原因になったことや、(2)京都の妙心寺が奉安塔の建設に関しても多くの費用を負担した可能性が高いことだけでなく、(3)シャム王室が日暹寺の建設が遅れている状況を心配していたことに加え、(4)日暹寺の存在は、日置黙仙が住職を務めた明治時代末期から大正時代初頭にかけての時期に、本来の趣旨とはかけ離れた八十八箇所廻りや三十三観音を整備する中で、名古屋市民の間に浸透していったことが明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の研究計画では、科学研究費を採択される前の調査と併せて、平成27年度中に1902年から1918年までの『新愛知』と『名古屋新聞』の閲覧を終える予定にしており、今年度は、その計画通りに、当該期間の二紙の調査を終了することができた。ただし、実際に1918年までの新聞紙面を見てみると、同年6月に奉安塔が建設された後の11月には、本堂建設の地鎮祭が行われていることが明らかになった。しかし、本堂の完成は実際には1984年10月まで待たなければならなかった。大正期に地鎮祭まで行ったにもかかわらず、なぜ本堂が建設されなかったのかについては、実はこれまでの研究では見落とされていた大きな問題の一つである。今後は調査時間がさらに必要になってくるものの、『新愛知』と『名古屋新聞』の閲覧時期を当初予定の1918年から1926年まで延長し、この問題についても明らかにすることで、明治・大正期の日暹寺の歴史を包括的に再検討するという研究目的を達成することにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」の部分で述べた理由により、本研究の2年目に当たる平成28年度は、『新愛知』と『名古屋新聞』の1919年から1926年までの全紙面を閲覧することから開始する。『京都日出新聞』の1906 年から1926 年までの全紙面についても併せて調査する。また一次史料は残っていないことが予想されるものの、覚王山日泰寺に調査に赴くとともに、名古屋市鶴舞中央図書館の名古屋市史編纂資料の中に残っている元名古屋区長の吉田祿在の文書「吉田祿在君伝」や、岐阜県山県市の東光寺にある妙心寺の僧前田誠節の手記「隔生即忘」の調査にも着手する。 本計画最終年度に当たる平成29 年度は、それまでの2 年間の調査結果を活用して、学術論文を発表するとともに、学会等で報告することにしたい。
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Causes of Carryover |
平成27年度において、次年度使用額が生じた理由は、年度末の3月29日から30日まで国立国会図書館と日本近代文学館に出張した際の複写料金に使用するつもりだったお金が残ったからである。年度末の出張であったため、年度内に別の用途に使用することは困難であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は7053円であるため、平成28年度に資料調査を行う中で、複写料金に充当することにしたい。
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