2016 Fiscal Year Research-status Report
人口減少国日本の地方圏への外国人誘導政策の実行可能性に関する試験的研究
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15K12951
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石川 義孝 京都大学, 文学研究科, 教授 (30115787)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 外国人 / 国際人口移動 / 地方創生 / カナダ / オーストラリア / マニトバ州 / 南オーストラリア州 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目の平成27年度にはカナダ、2年目の平成28年度においてはオーストラリアの事例を中心に研究を進めた。オーストラリアで移民の地方圏誘導を意図しているのは、「州特定地域移動計画State-Specific and Regional Migration Scheme (SSRMS)」と呼ばれる政策である。この政策は、1996/97年に導入され、2015/16年でちょうど20年が経過した。 2017年3月にオーストラリアを訪問し、SSRMSがもっとも成功している州と評価されている南オーストラリア州政府の移民担当部署(Immigration SA)、キャンベラにあるオーストラリア政府の移民担当部署(Department of Immigration and Border Protection)、およびシドニーにある2大学の研究者を訪問し、聞き取りを行うとともに、関連データや文書の収集を行った。 得られた主な知見は、以下のとおりである。主な移民送出国は、イギリスの他、インドや中国をはじめとする多くのアジア諸国に及んでいる。SSRMSによる移民は、熟練労働力に限定され、高い英語能力が求められるとともに、流入した州に通常2年継続居住する必要がある。当該の州に残留する移民の割合については、詳しい調査がなく不明である。この制限期間が過ぎたあとは、シドニーやメルボルンといった大都市に流出する人口が、一定数いるようである。この政策導入後の20年間における州・準州ごとの受入数を見ると、最初の3年間は南オーストラリア州が最多であったが、1999/00年から2008/09年にはビクトリア州が最多を記録している。2013/14年以降はニュー・サウス・ウェールズ州も数を伸ばしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カナダの事例に関する検討は、2016年3月の訪問をきっかけに順調に進んでいる。2017年3月のオーストラリア訪問によって入手した資料やデータや、聞き取り調査結果の詳細な分析は、2017年度に実施の予定である。SSRMS導入後に受け入れた移民数の州・準州ごとの変化はやや複雑であり、経済動向以外に、オーストラリア政府の移民受け入れに関する姿勢の変化の影響も受けていることがわかった。 カナダのProvincial Nomination Program (PNP)とオーストラリアのSSRMSは、いずれも1990年代後半に、地方圏における経済の停滞や、人口変動(特に流入人口)の低調さという類似の理由を背景として、互いに独立的に導入された点が、興味深い。両国間における主な違いは、以下のようにまとめることができる。移民の地方圏誘導政策の対象となっているのは、カナダでは半熟練・熟練労働力、オーストラリアでは熟練労働力である。前者では、憲法で居住地選択の自由が保障されているため、移民が流入先の州に一定期間居住する必要はない。にもかかわらず、例えば、マニトバ州におけるPNPによる移民の残留率が高いうえ、州内の小都市や農村部への移民の分散に成果をあげている。後者では、流入先の州で少なくとも2年間の居住を義務付けられていることが多い。南オーストラリア州の場合、SSRMSによる移民の州都であるアデレードの都市圏への集中が顕著であり、州内での分散は進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目のカナダ、2年目のオーストラリアの事例研究の成果を踏まえ、3年目の2017年度には、日本の地方圏への外国人の政策的誘導の可能性について、外国人関連の現行の諸施策に関する具体的な考察を通じ、検討を進める予定である。
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